「農民」記事データベース20000110-433-02

シアトル

海を越えて心一つに「家族農業を守ろう」

日米農民組織(農民連・全米家族農業者連合)が語り合った

 アメリカと日本の農民組織が初めて会い、おおいに共鳴した。アメリカ・シアトルに駆けつけた全米家族農業者連合(NFFC)と農民連の代表が十一月二十八日に会談し、国境を越えて家族経営と食糧主権を守る共同を強めることを合意しました。初めて会ったとは思えないほどうちとけ、共鳴しあった会談の模様を新年特別企画でお届けします。

出席者(発言者のみ)
▼アメリカ側
 ビル・クリスティソン全米家族農業者
 連合委員長
 ジョン・カインズマン副委員長
 ジョン・ハンセン・ネブラスカ農業者
 連合委員長
 メアリー・リッパートさん(女性)
 フランシス・グッドマン氏(酪農家)
▼日本側
 真嶋良孝・農民連事務局次長
 根本敬・農民連常任委員
 高橋マス子・農民連女性部長
 村尻勝信・農民連常任委員
 坂口正明・食健連事務局長
 石井正江・生消研事務局長


大企業支配で家族経営が窮地に

WTO変えなければ

 カインズマン 皆さんにお会いできて、光栄です。

 アメリカでは“農家は第三世界に住んでいる”といわれていますが、一九九六年のアメリカ農業法は、アメリカの家族農業の状況をどんどん悪くしました。家族農業を営んでいる半数以上の人たちが私たちの立場に同調し、支持していると思います。

 WTOで大企業の農業支配を進めている側は、家族農業を大きな脅威と見ており、家族農業を破滅させたいと考えています

自国市場明け渡してはならない

 日本はアメリカの農産物の最大輸入国ですけれども、私たちアメリカの農業者は、日本の人たちがほしいと思うものを作りたいと思っています。しかし、世界の家族農業者たちは、国内の市場をあけわたしてはならないと思います。

 真嶋 お目にかかれてたいへんうれしく思っています。

 私たちは二十一世紀に向けて、世界の食糧を守ることが人類的な課題の一つだと思っています。ところがWTO協定は、飢餓に苦しむ途上国や日本のような異常に食料自給率が低い国に対しても、生産を抑制することを強要しています。

輸入・減反で自給率はドン底に

 WTOが施行されて五年たちましたが、米の価格は大暴落を続け、日本の食料自給率は、カロリーで四六%から四一%へ、穀物自給率は三三%から二八%へと劇的に落ち込んでいます。その一方で、日本の農地の半分以上を占める水田の減反(休耕)は四割近くにも達しています。ですから、WTOが与えた影響を徹底的に明らかにすることがどうしても必要です。

 その点で、NFFCとカナダ、ヨーロッパの家族経営組織が九七年に出した共同声明では「各国が不必要な食糧輸入から国内市場を守る権利を認めるべきだ」「国内の食糧需要がまず国内の農民によってまかなわれるように、侵略的な輸出政策を転換し中止すること」「農産物価格は生産コストをカバーすべきだ」と要求しています。こういう皆さんの主張を読んで、私たちはたいへん感激し、ぜひお会いしたいと思って、やってきたわけです。

 こういう立場で、一緒にWTOルールを変えていく、それができないなら、WTOから農業と食糧の問題をはずすべきだと思います。

 根本 私は米を約三ヘクタール作っています。私の父が米作りを始めたのは今から五十年前ですが、日本はまだ米の自給を達成していなかったので、食糧増産に必死に取り組みました。当時、父が一生懸命に米を作っているときに、私たちの学校給食はアメリカから輸入されたパンとミルクでした。日本の農民が食料自給率を上げようと頑張っているときに、政府は輸入に依存する政策にシフトしていったわけです。いまWTOのもとで、日本の二の舞になる国が増えようとしていますが、こういうことを許してはならないと思います。

 カインズマン 私たちもそう思います。アメリカでも、国民の食生活が非常に不健康な形に変わってきています。加工食品が蔓延して、その中身はアメリカで生産されたものではないものが使われている。

 WTOとそれを動かす企業は、食べ物の輸送の距離をどんどん延ばすやり方を進めています。生産地から口に入るまでの距離が平均二千マイルという計算が出ていますが、これは不必要な距離です。しかし、これで企業はお金をもうけているわけです。

(新聞「農民」2000.1.3/10付)
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