本の紹介

遺伝子組み換え作物に未来はあるか

柳下登監修　塚平広志・杉田史朗著

豊富な情報、平易な記述で全体を掴むのに便利な書

　遺伝子組み換えの本は色々発行されていますが、難かしいのが普通です。ところが、本書は最新の事実や情報を克明に手際よく整理し、わかり良く記述されているので、あっという間に読めるのが魅力です。

　みんなが知りたいと思っていることが次々に分かって読みごたえがあり、遺伝子組み換えをどう考えたらよいかを明らかにしてくれる嬉しい本です。

　また本書は、植物遺伝学の研究者自身が直接、組み換え問題について、安全性や環境との関わりを憂慮しながら事実にもとづいて平易に解説しているのも、類書に見られないものです。

　遺伝子組み換えの分析を杉田博士に教えていただきましたが、博識で誠実な実験態度には感銘を受けました。

　一般には、学者、研究者、技術者は遺伝子組み換えの推進の立場に立つ方が多いなかで、研究者自身の記述は注目されるし、実証性があり、重みがあります。

　農民連食品分析センターで遺伝子組み換えの分析を開始したことについても、触れられていますが、本書を読めば読む程、いっそう国民の期待に応えて頑張らなければと痛感します。

　遺伝子組み換え食品に関心を持っている方はもちろん必読ですが、まだ関心のない方、良く知らない方にぜひ読んで戴きたい良書です。

　二十一世紀をになう子どもたちの食の安全を守るためにも、本書のご一読をお勧めします。

　（本の泉社・定価一六〇〇円＝税別）