いま、農の現場は…花苗価格を下げさせた生産者JA全農技術主幹・非常勤/小川政則
日本花き生産協会力ーネーション部会(東京都港区芝大門二―六―五協和ビル、大貫栄一会長、会員三千二百人)に結集する生産者が長いたたかいで念願のカーネーション苗価格を下げさせたと聞き、部会長の大貫さんから話を聞いた。 大貫さんは神奈川県厚木市のカーネーション専業農家。農事功績表彰も受け、神奈川県農総研の在村研究員も経験された。 カーネーションは多国籍企業がアメリカやヨーロッパの輸出産地を支配し、国際競争の激しい部門である。日本の栽培面積は世界四位、五百二十ヘクタールであるが、アメリカの投資会社が日本の六割にもあたる産地をつくり、世界中に販売をしかけるなど激しい競争が展開されている。切花輸入は一時期九%位を占めたが、円高や一部産地の病気発生、日本の生産者の努力などで、現在七%位である。切花価格はバブル期一本六十五円位したが、現在の平均価格は四十五円位だという。 カーネーション部会は全国二十三県に支部があり、大会と研究集会の年二回情報交換や研修を行う組織で、経済団体ではない。カーネーション苗はかつて生産者の自給や国内供給されてきた。 しかし種苗法の改正や輸入品種の増加などで、九五%以上が輸入苗となり、種苗商社の独占化した売り手市場に変わった。日本の生産者は切花価格が下がるのに、苗価格はヨーロッパと比べ二〜三倍高く、生産費の最大費用となり不満が高まった。 大貫さんは自らも苗生産の経験があることから部会員の要求を受け対策の先頭に立ち、商社と何回も交渉するが値下げにならず、全農にも相談するがどうにもならなかった。手弁当の海外調査で日本の生産者は苗一本四十八〜六十円で買わされてきたが、ヨーロッパでは二十二円位なこと、輸送経費などを含めても三十五円位で買えるはずだとわかり、必死の運動が続いた。輸入業務ができて新規参入をねらう企業に働きかけるが価格面でおりあわなかった。 しかし、部会として百万本の苗注文をまとめることで一本三十七円とする契約が成り立ち、この運動を組織として取り組み、念願を実現させた。二年目二百万本、三年目の今年は四百万本を目標に注文をまとめ、さらなる苗価格の値下げをめざしている。各県に試験地を設け、同一品種の栽培に取り組む運動は切花の販売面でも有利な条件をつくっている。 この運動を総括して大貫さんは「家族経営が多国籍企業と立ち向かうには、組織に結集して力を合わせてたたかうことだ」という確信を一層強めている。日本の生産農家全体の教訓でもある。
(新聞「農民」1999.12.20/27付)
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[1999年12月]
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