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日本一の梅の産地・南紀州

いま、梅枯れの危機に…

関電第二火力の稼働やめよ


 和歌山県の田辺市、南部町、南部川村、印南町、上富田町は、全国生産量の約半分を生産する梅の大産地ですが、十数年前から元気な梅の樹が突然衰弱して枯れていく症状(梅の“衰弱症”“立ち枯れ”“生育傷害”と呼ばれている)が現れ始めました。その原因は関西電力の火力発電所にあると、いま大きな運動が起きています。

 衰弱症は最初の頃、田辺市や南部川村の山間部で発生するだけでしたが、今日ではこの地方全域に広がり、累計で約十四万本になり、十アールに約三十本の梅の樹が植えられるとして、被害面積は約四百五十〜五百ヘクタールにのぼります。全滅に近い地域では、離農していく人も出ています。

衰弱の原因は

 “衰弱症”の原因については当初、農家の間でも梅の実のならせすぎ、水分不足、土壌が悪い、新しい病気などの諸説がありました。しかし、今日では、被害農家の多くは関西電力の御坊第一火力発電所(第一火電)によるものではないかと考えています。理由は、第一火電が一九八五年に本格稼働した後から“衰弱症”が始まったり、被害のひどい地域ではビニールハウスが数カ月で真っ黒になったり、山桜が枯れたり、傾斜地、水田転換地など、どの畑でも枯れたり、水分の多少は関係ないからです。

 県は二年ほど前から学者らによる調査団を結成。原因究明していますが、土壌が悪い、ならせすぎ、水分ストレスなどが主な原因だとし、煤煙をまともに調べようとせず、関西電力のデータで「大気はきれいだ」と判断し、来年三月までに「大気環境は関係なし」という最終報告を出そうとしています。被害農家は納得できるはずがありません。

人体に悪影響

 問題は、これだけではありません。第一火電の近くに御坊第二火力発電所(第二火電)が建設され、二〇〇七年に一号機が稼働の予定です。第二火電は四基で四百四十万キロワットという日本でも最大規模のもの。しかも、燃料が公害性の高いオリマルジョンで、世界的にも環境面からほとんどが「稼働中止」「廃止」になっています。「第二火電が稼働すれば、梅が全滅するだけでなく、人間も大変なことに」という不安が広がりつつあります。

世論と運動で

 農家も、この状況を黙って見ていたわけではありません。第二火電計画の発表後、火電に反対する市民団体が結成され、農民との共同の運動が繰り広げられ、署名に取り組んだり、御坊市長選では第二火電を推進する現職と正面からたたかったり、運動の輪と世論はどんどん高まってきました。

 JA紀南の開催した大会に二千四百人が参加、十万近くの署名が集まるなどの運動に発展しています。

 また、農民連などを中心とした「紀州の梅を守る会」が結成されたり、昨年からは“衰弱症”の解明にむけ日本科学者会議のメンバーとの研究も始まりました。被害農家らを中心に「梅枯れ対策期成連盟」が今年一月末に結成され、現在千軒近い農家が加盟するなどの運動も続けられています。

 県は十一月に関西電力から申請されていた第二火電の埋め立の許可を出しましたが、被害農家から「農家を切り捨てるのか」などの怒りの声が上がっています。

(和歌山県連 那須幸生/新聞「農民」1999.12.20/27付)
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1999年12月

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