「農民」記事データベース991206-430-06

遺伝子組み換え食品

厳しいEU混入率1% 「不使用」表示 日本は上限を示さず野放し

欧州から締め出されたものが日本に押し寄せる危険

関連/農民連など七団体参加し分析検査標準化で協議会


国際セミナーで英研究者が指摘

 遺伝子組み換え食品について世界的に議論が高まっているなか、「遺伝子組み換え食品をめぐる国際動向と検査・認証問題」のセミナーが十一月十九日、横浜市内で開かれました。

 主催は、遺伝子組み換え食品の分析、非組み換え認証業務を世界各地で行っているジェネティックID日本事務所。食品産業、流通関連業界、研究者、消費者など二百人余が参加しました。この中で、欧州における遺伝子組み換え(GM)食品をめぐる情勢について報告したイギリスのロー研究所代表ミール・グリシス最高責任者は、イギリスを始め世界各地でGM食品が反発を招いているのは、食品の中に遺伝子組み換えが入ってきた歴史が極めて新しいうえ、開発企業は消費者のことを考えず、一方的に押しつけてきたことにあると述べました。

 また同氏によると、ヨーロッパでは、新規食品については産業界、消費者が長い時間をかけて論議し、遺伝子組み換え大豆、トウモロコシとその派生物の法的規制(表示)を九六年〜九七年にEU法で決定、さらにそれに基づき各国が法規制をつくっている。その場合「遺伝子レベルで改変された遺伝子組み換え作物は、元の作物とは同等ではなく、別のもの」という法解釈をとり、すべて表示義務があるという。この立場から最低限許容率(組み換え原料の混入率)を一%にする方針で、いま議論が行われている。

 さらに欧州連合(EU)では、非組み換えという表示をするには、〇・一%以下の混入率でなければならないというきびしい基準を設けている。

 この点は、OECDを始めアメリカ、日本などが「実質的同等性」という考え方をとり、組み換え作物が元の作物と比べ、姿形、成分、主要栄養素、性質などが殆ど同じであれば、元の作物と同等とみなし、厳しい安全審査は必要ないという開発企業に都合のよい立場をとっているのとは大きな違いです。

 またロー研究所の代表は、農水省が二〇〇一年から実施するとしている表示規制への懸念としてつぎのように述べました。

 「アメリカにとって、日本とヨーロッパが世界最大の需要者であるが、ヨーロッパには、組み換え原料の混入が一%を超えるものは輸出できない。もしも日本がヨーロッパより高い許容基準にすると、ヨーロッパ向けでは、はじかれたものが日本には非組み換え品として回されて来ることになる。ヨーロッパの規格外市場が日本になりかねない」と警告しました。

 農水省が先に決めた表示案の骨子では、IPハンドリング(分別・保管された非組み換え品)の場合、最大五%まで遺伝子組み換え原料が混入していても、「不使用」ということになっています。ところが農水省は義務表示の詳細を近く公表するが、このなかでは五%も取り払い、混入率の上限を決めず、企業の判断に委ねる方針。ただ混入率が一〇〜二〇%といった高い場合にだけ不当表示としてチェックするとしています。これでは事実上、遺伝子組み換え原料の混入を一〇〜二〇%まで黙認することになり、ヨーロッパや世界各地でボイコットされ、行き場を失っているアメリカの組み換え作物が大手をふって日本に押し寄せることになります。せめてヨーロッパなみに、混入率の上限を一%にさせることが必要です。


農民連など七団体参加し分析検査標準化で協議会

ジェネティックID社が発表

 同セミナーの席上、ジェネティックID社日本事務所の塙代表から、「遺伝子組み換え食品分析検査能力標準化のための協議会」が、ジェネティックID社、農民運動全国連合会食品分析センターなど七社・団体の参加で作られたとの発表が行われました。

 この協議会は、各検査機関が消費者・食品産業にとり信頼できる遺伝子組み換え食品の分析検査を提供できるようにするため、中立の第三者機関の検定も受入れ、相互に協力して検定を実施していこうというもの。

 ジェネティックID社は、一九九六年に分子生物学者のジョン・フェイガン博士により設立。同博士は米国国立衛生研究所などでDNAの研究をしてきたが、遺伝子組み換え食品の危険性に気づき、研究費を返上、遺伝子汚染の危険性を訴え各地で講演しています。

 ジェネティックID社はアイオワ州に本社があり、アメリカ国内のほか欧州事務所、日本事務所があります。

(新聞「農民」1999.12.6付)
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1999年12月

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