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異議あり!

「自給率向上」に難クセ

アメリカ大使館公使の露骨な内政干渉発言


 「農業の多面的機能はWTO新ラウンドで議論する価値がない」(バシェフスキー・アメリカ通商代表)、「日本は“公約違反の常習者”だから特別の注意を払うべきだ」(アメリカ上院決議案)WTO新ラウンドを前に、アメリカから異常ともいえる“日本たたき”の暴言・放言が相次いでいます。

 格は小物ですが、さらに口をきわめて内政干渉発言をしているのが、アメリカ大使館農務担当公使のジョン・チャイルド氏。

 時事通信の『農林経済』(十一月八日)に掲載されたインタビューで、日本の「自給率向上」政策を次のように非難しています。

「貿易を歪曲するから正しくない」

 「食糧の安全保障イコール自給率向上という考え方は正しくない」「(新農業基本法で)食糧自給率向上を設定することは、貿易を歪曲する可能性が強い」

 新農基法にもとづいて自自公政権が真剣に「自給率向上」に取り組むとはとうてい考えられませんが、そのやる気のなさを見越してか、まず、こういう先制パンチ。問題はこの後です。

 日本が大豆と小麦の自給率を一%向上させるためには、それぞれ九十六億円、七十八億円必要だというアメリカの試算を示し、「小麦と大豆の自給率をそれぞれ一○%引き上げようとすると、千七百四十億円というコストを負担しなくてはならない」が、これは「WTOのもとで制限されている貿易歪曲的な国内支特政策である」と非難しています。

 さらに新ラウンドで「各種の支持政策に対する一層の改革が進めば、日本がそうした種類の政策を行うことに対する制約が出てくるだろう」と、日本が食糧自給率を向上させる政策をとることを全面的に妨害する意図を公言しています。

自国の農業保護措置はタナに上げて

 だいたい、日本の自給率向上政策に必要な財源をアメリカが「試算」すること自体が“大きなお世話”の内政干渉です。

 加えて、価格保障(不足払い)と減反を廃止した九六年農業法が破たんしたため、アメリカの穀物農家は十数年ぶりの経営危機に追い込まれています。クリントン政権は、この十月に合計八十七億ドル(約一兆円)の「農家救援資金」を出すことを決めました。

 チャイルド公使は「救援資金はたしかに新たな農業保護措置かもしれないが、交渉上問題になることはない」と述べています。アメリカ政府が出す一兆円は問題にはならず、日本政府が出すかもしれない「千七百四十億円」は口をきわめてののしる子ども(チャイルド)のたわごとで済む話ではありません。

「遺伝子」食品の表示にも噛みつく

 さらに遺伝子組み換え食品の表示問題をめぐっては「消費者の選択の自由を奪うつもりはない」といいながら「非遺伝子組み換え食品を米国以外から買いつけ……農産物貿易に悪影響を与えるようなことになった場合、WTOの原則に沿った対応を求める」と、スゴミをきかせています。

 消費者の選択で遺伝子組み換え食品が拒否されれば「貿易に悪影響」が出るのは、本来の意味での「市場原理」のはず。ロイター通信(十一月十一日)は「アメリカの肉牛、半数以上がO一五七汚染の可能性(農務省)」と報じましたが、“遺伝子組み換え食品も、O一五七も、どんなに危険でも黙って食え”これでは「市場原理」ではなく「墓場の原理」というべきでしょう。

(M/新聞「農民」1999.11.22付)
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1999年11月

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