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学校給食/子どもたちは何を食べ、何を食べないか (上)

野菜嫌い…「家でも無理に食べさせない」とお母さん

東京の小学校(二年担任)女教師のノートから


 がりがりに痩せている正太くん。野菜が食べられません。ゆで野菜、シチュー、けんちん汁など手の込んだものはとくにダメ。心配してお母さんに手紙を書くと「嫌いなものは食べさせないで。家でも食べさせていないから」との返事です。

笑顔で「今日は残さず食べた」

 低学年の給食指導は、幼いころの食生活ともろにぶつかります。四月下旬、バランスよく食事する意味、作ってくれた人への感謝など、一年生の子どもたちにもわかるように指導して、給食を始めます。が、食べ切れない子どもが何人もいます。給食指導を上手にしていくと、偏食もずいぶん直るのですが、正太くんのように家庭が「食べなくてもいい」という対応だと、なかなか改善されません。

 正太くんのお母さんと何度か手紙や電話のやりとり、家庭訪問をした結果、給食は一口ずつでも食べてみようということになりました。このごろは「先生、ぼく今日、残さず食べたよ!」とニコニコと言いに来るようになりました。

共働きで調理にかけるヒマが…

 食事は、文化やその家の暮らしの有り様が反映しています。正太くんの場合、インスタントものやカップ麺などの利用が多いようです。添加物で加工したきつい味でないと「おいしい」と感じない味覚になっているのかもしれません。「朝、昨日のおやつの残りのドーナツを食べてきた」なんて言ったこともありました。

 お母さんは、清掃の仕事で朝六時には出勤です。時間をかけて野菜を煮込むような調理には手がかけられないのでしょう。そうしたことが野菜嫌いにつながっているのかもしれません。

給食のない土曜の昼食の中身

 俊平くんは、給食の無い土曜日に千円札を持ってきて、友達に見せています。「どうしたの?」と私。「これで昼飯買うんだよ」と俊平くん。「えーお弁当は?」「忙しいからってお金くれたの」「お昼に何買うの?」「オニギリとか、サンドイッチ。それからね、コーラとスナックも買っていいんだよ」と得意そう。これは大変と思い、機会をみつけてそれとなく親に言うと、「えぇー?うぅーん。あのぅ、お金持たせておいた方が喜ぶんですよーぅ。仕事がきつくて、朝お弁当作るのも大変だしィー」という返事。子どもが子どもを育てている。そんな印象です。

「栄養素」は教えない指導要領

 俊平くんは、とにかく訳もなく他の子を叩いたり、蹴ったりします。カルシウム不足など、もしかしたら食事のあり方も情緒に影響を与えているかもしれません。俊平くんのお母さん、栄養の勉強忘れたかな。

 三大栄養素を教えるのは小学校六年生の家庭科ですが、今度改訂の学習指導要領では、「細かな栄養素や食品成分表の数値は扱わないこと」とされました。俊平くんのお母さんと感覚のあうお母さんが、これからも増えるのでしょうか。

(以下次号)

(新聞「農民」1999.11.8付)
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1999年11月

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