臨界事故から1カ月依然残る「後遺症」茨城県産野菜デパートなど扱わず
「まだ市況が回復しない」「お歳暮用の干イモの注文がない」「無地の箱に切り替えて出荷している」九月三十日に東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故から一カ月、茨城県内の農家は、いまだに事故の深い傷跡に苦しんでいます。 東京のデパートの野菜売場、茨城産の野菜はまったく見られません。その理由を店員にたずねると、「デパートから入れるなと言われている」という返事が返ってきました。 「事故の影響はまだある。とくに地方の市場や業者筋(スーパーやレストラン、ホテルなど)では、まだ茨城産を買わないところがある」というのは、築地市場・東京中央青果の折戸勝郎課長。茨城産のサツマイモは、主に東北方面に出荷されますが、いまだに市場で敬遠されていると言います。 築地市場での茨城産の市況は、東海村のものが二〜三割安の他は、レタスやトマト、キュウリ、ピーマンなど、他県産と同程度。仲卸や小売からは、「市場での影響はもうほとんどない。地元の自営業者が大変だろう」という声が聞かれる一方、地方市場への転送や業者筋との取引を主に行う仲卸からは、「持って帰ってくれと言われた」「ラップをとって納めた」という声もありました。 「国は、早急に原子力損害賠償法を決議し、国の責任を明確にするとともに原力政策を抜本的に転換すべき。同時に、風評被害を乗り越えて、農家に『大いにものを作ろう』と呼びかけていく」と、茨城農民連の飛田元雄書記長。茨城県連は、原発問題住民運動茨城連絡センター(準備会)に参加し、農家の救済に全力をあげるとともに、組織内外に呼びかけ産直を広げる運動にとりくんでいます。
東海村、ひたちなか市などJCOに対する農水産物の損害賠償一次分がほぼ出そろいました。東海村では、同村農産物賠償対策協議会(永井一郎会長=農民連会員、日本共産党村議)が十八日、同社に対し約七億円の賠償請求書を提出。損害額は、同協議会が農家三百九十七戸、法人一戸からアンケート調査し、まとめたもの。名産の干イモ農家が中心です。 隣接するひたちなか市では、二十二日、十一の経済団体が総額約二十億円の賠償を要求。十一団体には、商工会議所や観光協会のほか、JAひたちの、干イモの生産組合、漁協なども。同日、茨城県水産加工協同組合連合会も、約六億円の要求書を提出しました。 一方、県JAは二十九日、返品や出荷停止などによる損害実額を第一次分として約三億円を請求。風評被害などは含まず、今後も第二次、第三次の請求を行っていくとしています。
(新聞「農民」1999.11.8付)
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[1999年11月]
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