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一世代限りの種子(ターミネーター)

モンサント社が開発凍結

国際的反対世論の高まりで


 アメリカのバイオ企業モンサント社は十月四日、遺伝子操作で農作物を自家採種できなくするターミネーター・テクノロジーの開発を当面凍結し、商品化を見送る方針を明らかにしました。

 この技術は、種子を死滅させる毒性タンパクを作る遺伝子を植物の細胞の中に組み込み、一回目の発芽の時は、その毒素遺伝子にカギがかけられて種実は収穫できるが、二回目にはそのカギが外れて種子が死滅するという仕組み。これはアメリカの農務省と種子企業デルタ&パイランド社が開発、モンサント社がデルタ社を買収して、この技術を手中に収めました。

 アメリカでは、ターミネーターによるワタとタバコの商品化をめざして特許を獲得、日本など世界七十八カ国に特許申請中です。

 ターミネーター・テクノロジーの開発目的は、遺伝子組み換え作物の種子を百%自家採種できなくすることによって、“海賊版”の出現を防ぎ、農家は毎年高い特許料と種子、農薬をセットで買わされるなど露骨な自社技術の利益保護と種子支配を狙ったもの。それだけに発展途上国の農民を始め世界各地から強い反対が巻き起こっています。

 また六月には、ロックフェラー財団のゴードン会長がモンサント社幹部に「ターミネーター種子の研究を即刻取り止めるべきだ」と申し入れていました。
 こうした反対運動が高まるなかでモンサント社は、開発・商品化を当面、凍結せざるを得なくなったわけです。

 モンサントの害虫抵抗性ワタの栽培試験に反対運動を続けているインドの農民は、開発停止のこの発表に歓喜し、インド政府もこの発表を歓迎。WTOに対してモンサントがインドのバイオ資源を収奪していることへの処置を要求しました。

 モンサントは、当面の開発を凍結するとしているだけで、将来にわたる研究、開発を断念したわけではありません。
 多国籍企業の行動を追跡しているカナダの国際NGO(RAFI)によると、ターミネーター・テクノロジーの開発は、モンサント社以外にもアストラ・ゼネカ社(イギリス)がネズミから採った毒素遺伝子を利用した発芽抑制技術を開発、この技術を“パーミネーター”と命名、すでに特許承認を取得。またノバルティス社(スイス)も、十二件ものターミネーター型技術を開発し、特許申請中です。

(新聞「農民」1999.11.1付)
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1999年11月

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