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山深い飛騨・清見村で

酪農の“理想郷”を求めて30年

高山農民組合長の田中正夫さん一家


飼料は自給、共進会で優勝の牛も育てあげる

 厳しい酪農情勢のもとでも、改良に改良を重ねて健康な良い牛を自家生産し、粗飼料も自給して立派に酪農経営を成り立たせている農民組合員が岐阜県にいます。高山農民組合長の田中正夫さん。田中夫婦と息子夫婦の四人が力を合わせて「おどり牧場」を経営しています。

地形を上手に利用して牛舎建設

 田中さんは高山市内で酪農を営んでいましたが、広い牧野で理想的な酪農をやりたいという希望で三十年前に隣の清見村の山林約二十ヘクタールを取得し、「おどり牧場」を作りました。この地帯は冬になると、雪が一メートル以上も積もり、山の中に建物が一軒あっただけでした。牧場の下を東西に走る国道は、合掌造りで有名な白川郷に通じる道で、春の新緑、秋の紅葉期にはハイカーで賑わいます。

 牧場には、牧草地七ヘクタール、畑三ヘクタールと住宅、牛舎、倉庫、集乳室、育成牛舎などが地形を上手に利用して配置されています。成牛五十五頭、育成牛二十〜三十頭が飼育されています。

設備に使った借入金も大半償還

 田中さんは、健康な牛を自家生産し、元牛づくりにもっとも重点をおいてきました。北海道の牧場で修業した息子さんが、世界的に有名なカナダからホルスタインの精液を取り寄せ、人工授精して改良に改良を重ねてきました。元牛は外部から買い入れず、一〇〇%自家生産をしています。粗飼料も自給しています。

 その結果、現在一頭当たりの年間乳量は八千八百キログラム、脂肪率三・六%以上で、無脂乳固形分、細菌数も平均を上回るほどになっています。
 岐阜県のホルスタイン共進会でも優勝し、全国ホルスタイン共進会にも岐阜県から出品された八頭のうち二頭が田中さんの牧場から出場しています。
 田中さんは「今までの設備資金の借入金も大半を償還し、息子には借金をなくしてバトンタッチする」と語っています。

ユニークな絵本美術館にも協力

 牧場の麓の一角に「飛騨絵本美術館・ポレポレハウス」(写真)が建っています。田中さんの友人で教師夫婦の夢を実現させようと、土地を提供しました。若いカップルや幼児を連れた人たちが訪れ、飛騨の名所になろうとしています。
 絵本美術館が、子どもたちに夢を与え、良い世の中になるためにも協力している田中さんです。

(岐阜県連・岩田 昭/新聞「農民」1999.10.18付)
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1999年10月

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