農水省の「米需給安定対策」の大ウソ
政府がカネを出すとみせかけ… 結局は農民に負担を押しつける
九月二十二日、農水省は「米の緊急需要安定対策」を公表し、当初の“新米一俵六百円で投げ売り”構想に対する全国の強い反発を前に、厚化粧をほどこしながら、悪政を貫くことを宣言しました。ポイントは
(1)エサ用に“処理”する数量は三十〜四十万トン。九九年産の新米と政府備蓄用米(外米・古米)を入れ替え備蓄米をエサ用に回す
(2)主食用とエサ用の差損に対する助成額については十月中に決める
(3)来年の減反の規模は、史上最大の今年と同じ面積とするというもの。
主食用とエサ用の差損をどうするのかが最大の焦点ですが、これについては「所要の助成」を十月に決めるというだけで結論は先のばし。しかも、来年から減るはずだった減反面積は今年と「同様とする」と、さらりと言ってのける。
金は出し渋り、農民には史上最大の減反を相変わらず押しつけるこれが第一の問題です。
1万5千円で政府に売り1万3千円ふんだくられる
新米の投げ売りに対する農民と農協関係者の強い怒り。あわてた自民党・政府は必死にごまかそうとして小細工をろうしています。
その一つが、“過剰”な新米三十〜四十万トンを政府が買い、政府が備蓄している古古古米を農協が買ってエサ用に安売りするというカラクリ。
ちょっとみると、新米を一万五千円で政府に売り、古米を一万三千円で買うのだから、農民には二千円損するだけに見えますが、事実は大違い。一万三千円で買った古米は、エサ用に売るとわずか千円。しかも運賃が千円かかるので、差引ゼロ。一万五千円フトコロに入ったはずが、一万三千円米一俵二千円で投げ売りというわけです。
この二千円の差は、新米と古古古米の品質格差。エサ代金は運賃で消えてしまうのですから、実質的には農民はタダで“投げ売り”です。農民連はこれまで、一俵六百円の投げ売りだと指摘してきましたが、もっとひどいのが実態です。
政府は計画通り米を買い入れよ
さらに、政府が三十〜四十万トン余計に買うというのもインチキ。もともと政府は今年産米を七十五万トン買うことを「基本計画」に明記していました。農協に古米を引き取らせるなんていうスジの通らないことをやめ、政府は計画通りに買うべきです。
差損は政府が全額負担せよ
だいたい、政府が要らない外米を輸入して「過剰」な米をためこんだツケを、なぜ農民が払わなければならないのか! 一九八〇年代までは、全額、政府が負担して古米・過剰米を処理してきました。
「十月までに、いくら出すか決める」などとケチなことを言わずに、古米をエサ用に売る差損は、全額政府が負担すべきです。
そうでなければ、持て余し気味の古古古米を、農民の負担で処理する――「政府の方が古米処理で『ただ乗り』する」(日本農業新聞、九月二十日)ことになるではありませんか。
米価回復へ二つの「緊急対策」を
ゴマカシだらけの「緊急対策」を引っ込めて、(1)豊作のときは、隣の韓国がやっているように、余計な外米の輸入を減らす、(2)米の買いたたきを野放しにする自主流通米制度を改善して米価の回復に力をつくす――二つの「緊急対策」をこそ実現すべきです。
米どころ北陸四県中央会が申し入れ
北陸四県の農協中央会は九月二十日、全中や国会議員に対し、“過剰な米の処理は政府の責任で”と申し入れました。今年産米の価格が「急激な下落となっており、今後はさらにその傾向が加速することが予想される」として、米どころ四県の農協系組織が団結したもの。
要請の内容も(1)過剰な米「全量を政府の責任により一括別途処理すること」、(2)米価補てん制度の「基準価格の固定や特別補てんの実施」など、農民の要求を実現することを真剣に求めたものとして注目されます。
(新聞「農民」1999.10.4付)
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