米のエサ用投げ売り「今年から実施」へ動く農民と農協関係者の怒りそらす、政府・自民が“変化球”「過剰対策」口実に新米・古米を複雑操作
米をエサ用に投げ売りする「構想」は、来年からではなく、今年から動きだすことが確実になりました。 「思い切った対策」とは何か――。「商系アドバイス」(九月六日)によると、自民党と食糧庁は次のような合意をしたといいます。
(1)今年産米の豊作による“過剰”分(三十万トン)は政府が買い上げる。 これは、新米をストレートに一俵六百円で投げ売りさせることに対する農民と農協関係者の強い怒りにあわてて、自民党・政府が投げた“変化球”です。 農民連は投げ売り構想が明らかになった七月から、新聞「農民」号外や請願署名用紙を持って、各地の農協・農業関係者と対話し、これまでにない共感を集めてきました。こういう運動の広がりを恐れた政府と自民党が”変化球”をなげざるをえなかった――私たちは、ここまで政府を追い詰めているのです。 「入り口」で買いたたくか出口かの違いこの“変化球”は、農協関係者の目をくらませる可能性もあります。しかし、いくらごまかしても、正体はエサ用に投げ売りさせること。表向きは“過剰米”を一俵一万五千円台の「政府米」で買ったように見せかけ、裏で全農が「政府古米」を一万二千円台で買って、エサ用に六百円〜九百円で売れば、その差額(六百億円)は農民の負担になります。 いきなり新米を六百円で買いたたく“アッパーカット”で痛い目にあわせるか、“ボディブロー”で、最初は一万五千円で買ったように見せかけて、後からじっくり痛みを与えるかの違いにすぎません。 銀行に60兆円、農民には出さぬ全国農協中央会(全中)は、政府に「万全の支援」を求めています。しかし自民党幹部は「差損は生産者負担が基本だが、全額負担の拠出に(生産者の)理解を得ることは難しく……政府助成などを要望している。しかし大蔵省の抵抗は強く、農水省の予算を拡大するのは難しい。助成金は農水予算を組み替えて捻出する可能性が高い」と言っています(「商系アドバイス」九月六日)。
わかりやすく言えば、こういうことです。 過剰分買い入れは“恩恵”ではないさらに過剰米の政府買い入れを、いかにも“恩恵”であるかのように描きだすこと自体がゴマカシです。
(1)一九八〇年代までは、政府が自主流通米に回る以外の米を全量買い入れ、三〜四年備蓄したあとに援助用や飼料用に売却してきました。買入価格と売却価格の差額は、当然、政府が全額負担。農民の負担はゼロでした。
(2)新食糧法のもとで、政府の買入は備蓄用に限られることになりましたが、それでも九五年には百六十二万トン、九六年・九七年ともに百十四万トン買い入れてきました(表)。
しかし、九八年からは、政府米の備蓄数量を減らすために「新たな備蓄運営ルール」を作り、政府買入数量は政府米売却数量の二十五万トン引きということにされました。政府の「試算」によると、七月末現在の政府米売却量が約三十九万トン、マイナス二十五万トンで、政府買入数量は十四万トン。
第一に、政府備蓄がダブついたのは、要りもしない外米を政府が無責任に輸入し続けたためであり、農民の責任ではありません。
米価回復させる二つの対策実現を政府はインチキ手品でごまかすのをやめ、次の二つの対策を実現すべきです。第一に、平年作を超えたら、国産新米の“投売り”処分によって需給を調整するなどという逆立ちしたやり方を改め、要らない外米の輸入をやめるか、エサ用や海外援助に回すべきです。現に隣の韓国では作柄に応じてミニマム・アクセス米の輸入を増減させているではありませんか。 第二に、米価暴落のもう一つの原因――食管制度を廃止したうえに自主流通米の値幅制限を撤廃して、買いたたきを野放しにする仕組みを作ったこと――をただし、せめてアメリカやEUが続けているような最低限の価格下支えの仕組みを確立すべきです。とくに
(1)自主流通米入札の値幅制限を復活させ、大資本の買いたたきを制度的におさえること
(新聞「農民」1999.9.20付)
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[1999年9月]
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