「農民」記事データベース990913-419-03

「過剰在庫」口実に買いたたきの裏で

まかり通るニセ“銘柄米”

古米、外米を大量ブレンド。六銘柄中、ニセが五銘柄も

「朝日」報道


 “四割が売れ残り、平均価格は昨年同期比九・七%ダウンの一万七千八百二十八円”八月三十一日に行われた今年産自主流通米の初の本格的な入札は“買い渋りと買いたたき”でスタートしました。

 主要銘柄をみると、新潟一般コシヒカリが三千三百二十八円(一四%安)、魚沼コシヒカリ五千九百六十円(一八%安)などなど、一昨年並みの暴落。農協側が初めから買いたたきを見込んだ「希望価格」を提示しましたが、「豊作による先安」をにらんだ大手卸の“談合”的買い渋りと買いたたきの前になすすべがないという状況です。
 米どころ新潟や福島でも、出来秋を前に、いつもは計画外流通米を買いあさる業者が「昨年産の手持ちを抱えている」ことを理由に姿も見せておらず、米卸も「買い付け禁足令」を出しているといいます。

昨年産米は減反・不作で不足なはず

 共適しているのは「昨年産米の過剰在庫」を理由にしていること。
 しかし史上最大の減反と不作によって、昨年産米は二カ月半相当(百万トン)不足しており、まともな商売をしていれば“過剰”どころか不足のはず。昨年、卸や計画外流通米業者は“新米不足”を見越して米を買い付けましたが、「安いブレンド用原料が大量に出回って目算が狂った」(ある卸)といいます。

 表から明らかなように、「不足」を「過剰」に転換させた犯人「安いブレンド用原料」は、外米と古米です。減反と不作によって昨年産米(自主流通米と計画外流通米)は四十万トン以上不足。これに対して、政府米(その主力は九五年産の「古古古米」)の販売量は二倍近く、外米(SBS=売買同時入札)は三倍近くに増えています。
米の需給事情(試算)
(単位:1000トン)
 98米穀
年度(1)
99米穀
年度(2)
99/98
増減
自主流通米(11月〜7月)3,0342,652▼382
政府米(11月〜7月)227389+162
計画外流通米(年間)2,8002,680▼120
クズ米(年間)380370▼10
輸入米SBS(年間)3499+65
合 計  +65
  1. 政府米が2倍近くに伸びているが、その主力は1995(平成7)年産の「古古古米」であり、このうち相当部分が「ニセ新米」に化ける。
  2. 輸入米は、主食に回ることがほぼ確実な「うるち短・中粒種」。
  3. 「米の需給・価格情報に関する委員会資料」(99.8)などから作成

 「朝日新聞」(九月二日)によると、大手スーパーやディスカウントショップから買った「激安米」六銘柄(魚沼・新潟コシヒカリ、宮崎新米コシヒカリ、秋田あきたこまち)のうち、表示通りの本物はたった一銘柄で、残りはクズ米や「古古古米」がブレンドされたインチキ米。「産地や銘柄、年産も確認していない……検査外の三等品をかき集めた商品」であることを認めた業者もいるといいます。

 「朝日」は検査していませんが、外米が大量にブレンドされている可能性も大です。表から明らかなように、SBS輸入米(中国産「ひとめぼれ」やアメリカ産「こまち」、オーストラリア産コシなどの「うるち」玄・精米)が全量主食米に回ったとしても、なお三十万トン近く不足しています。「加工用」として輸入される「砕米」やSBS以外の「一般輸入米」のかなりの部分が主食用に化け、「国産米」としてまかり通っていると考えなければ説明がつかない事態です。
 ことしに入ってから、東京、大阪、石川、静岡などで「ニセ表示」が次々に摘発されていますが、こういう背景からすれば、ほんの氷山の一角にすぎません。

悪徳商法に拍車“600円投げ売り”

 九五年産米の売却価格は一俵一万二千九百円、中国米は一万三千二百円。こういう“激安”の米を「国産新米」といつわって販売する一方で、この水準に照準を合わせて買いたたく農民・消費者双方にとって悪徳商法そのものですが、政府はこれをやめさせるどころか、さらにあおりたてています。

 その代表例が、豊作による“過剰”分をエサ用に一俵六百円(十キロ六十円!)で投げ売りさせる構想。しかも政府・自民党は「価格の大幅下落の回避」を口実に、来年からではなく、この十一月から「緊急米過剰対策」をスタートさせることをねらっています。八月十五日現在の作況指数が「一〇三」になったため。
 これは「価格下落の回避」に役立つどころか“六百円で売るくらいなら、三〜四千円でウチに売らないか”という買いたたきを誘い、とめどもない暴落に道を開くことは必至です。

 「豊作」といっても、せいぜい平年作を三ポイント上回るだけ。これまで一ポイントは十万トンに相当するといわれてきましたが、生産量が九百万トンの現在、一ポイントは九万トンで“過剰”分は二十七万トン。ミニマム・アクセス外米(六十四万四千トン)を四割カットすれば消えてなくなります。
 悪徳商法のもとで“外米と国産米の垣根がなくなった”といわれる現在、「義務」でもないミニマム・アクセス米の輸入をやめるか一部をカットすることこれこそが米価の回復と、ニセ銘柄・ニセ国産米を防ぐ決め手です。

(新聞「農民」1999.9.6/13付)
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1999年9月

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