「農民」記事データベース990823-418-02

遺伝子組み替え食品

農水省最終案は抜け穴だらけ

9割が表示の対象から除外


 農水省は八月十日、食品表示問題懇談会遺伝子組み換え食品部会を開き、遺伝子組み換え食品の最終的な表示案をまとめました。
 この表示は「組み換え農産物の安全性はすでに政府によって確認されている」という大前提にたち、流通段階や原材料の検査はいっさい行わず、科学的検査でDNA(遺伝子)やタンパク質の存在が特定できるものだけに限定し、大豆、トウモロコシなどごく一部の食品の表示を義務づけるものです。

 その反面、すでに遺伝子組み換え種が三〇〜五〇%近くも混入しているアメリカ産大豆、トウモロコシ、カナダ産ナタネなどの大半を原料として使用している食用油、醤油、畜産用の飼料は表示の対象外となります。現在、日本には年間六百万トン以上の遺伝子組み換え作物・加工品がアメリカなどから入っていますが、これではその九割が表示を免れることになり、表示とは全く名ばかりのものです。
 しかも今回の表示品目の中には、「主な原材料とする食品」として、上位三品目だけに限定し、ビールなどのように実際には遺伝子組み換えのコンスターチが使われていても主原料でないとして、表示の対象から除くなどの抜け穴も作っています。

 さらに非組み換え農産物を現地から分別して輸入する場合、最大五%までは遺伝子組み換え原料が混入していても認め、「組み換えでないものを分別」などと任意表示できることにしています。ところがEUでは「二%以上含むものは、遺伝子組み換え使用の表示が必要」であり、スイスの場合は「一%以上混入していれば遺伝子組み換え」とされています。これではヨーロッパで遺伝子組み換え食品として排除されたものが、日本に来れば非組み換え食品として高いプレミアをつけて輸入されてくる可能性もあります。

 こうした抜け穴だらけの表示の義務化ですが、アメリカは日本に対し、「新たな貿易障壁」だと反発し、具体的表示について様々な干渉を強めてくることが予想されます。またアメリカは、次期WTO農業交渉の主要テーマに「科学的根拠に基づく貿易ルールの確立」を求めて、遺伝子組み換え食品のいっそうの押し付けを狙っています。

 一方、今回の表示では、これまで植物防疫法上輸入が禁止されている生食用のジャガイモやトウモロコシなども表示義務づけ品目に追加しています。これはいま農水省がイネの遺伝子組み換えの実用化をめざす「二十一世紀クリーン・フロンティア研究」などと関連し、同時にモンサント社などのバイオ企業が日本の農家に遺伝子組み換え作物の作付けを持ち込もうと狙っているのを視野に入れているのではないかと考えられます。

(T)

遺伝子組み替え食品の最終表示内容

 表示方法品名備考
表示をするもの「使用」を義務表示高オレイン酸大豆、同大豆油及びその製品。(現在、安全性評価を申請中)・従来の食品と同等でないGM農産物、加工品。
「使用」か「不分別」の表示を義務づけ。豆腐・豆腐加工品、凍豆腐、おから、ゆば、大豆(調理用)、枝豆、大豆もやし、納豆、豆乳、味噌、煮豆、大豆缶詰、きな粉、煎り豆、コーンスナック菓子、コーンスターチ、トウモロコシ(生食用)、ホップコーン、冷凍・缶詰トウモロコシ、これらを主原材料とする食品。ジャガイモ(生食用)、大豆粉を主原材料とする食品。植物タンパクを主原材料とする食品。コーングリッツを主な原材料とする食品。・従来の食品と同等だが、加工後も組み換えられたDNA、またはこれによって生じたタンパク質が存在するもの。
・生産・流通段階で分別された非GM農産物を原材料とする場合→「GMでない」「分別」等の任意表示または表示不要。
・GM大豆、トウモロコシの約1割が表示に該当するだけ。
表示の必要ないもの 醤油、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、ナタネ油、綿実油、マッシュポテト、ジャガイモ澱粉、ポテトフレーク、冷凍・缶詰・レトルトのジャガイモ製品、これらを主な原材料とする食品。・従来の食品と同等だが、加工工程で、組み換えられたDNA、またはタンパク質が除去・分解されたもの。
・大豆油、醤油には、米国産GM大豆の9割以上を使用。輸入トウモロコシの95%は米国産、その9割以上がコーン油、水飴、畜産用の飼料に使われているが表示の対象外に。
(注)「主な原材料」とは、全原材料中重量で上位3品目で、食品中に占めるGMの重量が5%以上のもの。例えばビールは麦芽、ホップ、米、コーンスターチ(GMトウモロコシ)が入っているが、4番目のため対象から除外するといったもの。

(新聞「農民」1999.8.23付)
ライン

1999年8月

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