「農民」記事データベース990809-416-01

遺伝子組み換え食品輸入世界一の日本で

安全確認されないまま市販されていた!

コーンスナック菓子などから検出

「表示」拒む政府の論拠崩れる


 世界最大の遺伝子組み換え食品輸入国日本では、「厚生省が安全確認したものだから、安全なものに表示の必要はない」と遺伝子組み換え食品の義務表示を拒否してきました。ところがこの根拠が完全に崩れさる重大な事実が明らかになりました。
 「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」事務局(安田節子事務局長)は七月二十九日、記者会見して、日本政府の安全確認を受けていない未承認の遺伝子組み換え食品が輸入され、現にスナック菓子やコーンスターチなどの食品として市販されているという調査結果を発表しました。

欧州で締め出されたBtコーン

 同事務局では、米コーネル大の実験で、遺伝子組み換えBtコーンの花粉でチョウの幼虫が死亡するなどの有害性が明らかになり、ヨーロッパなど各地でボイコットされた組み換え食品が日本に流入してきている可能性もあるとして、コーン食品を中心に遺伝子組み換えトウモロコシ(Btコーン)の使用状況を調査しました。

 調査したのは、市販のスナック菓子、コーンスターチなど十九検体を無作為に買い求め、米国のジェネティク・ID社に分析を依頼して検査しました。
 その結果第一次分として六サンプルの検査結果が明らかになり、五サンプルから遺伝子組み換えコーンの含有が確認されました。このうちコーンスナック菓子三品目からは厚生省の安全確認や農水省の審査も未承認のモンサント社、デカルプ社、プラントジェネティク・システム社のBtコーン、アグレボ社の除草剤耐性コーンがそれぞれ検出されました。

検査した米分析会社も「驚いた」

 これについて安田節子事務局長は、「わずか六サンプルの検査で、これだけの未承認ものが出てくるということは、日本の安全確認なるものが、いかにいい加減で尻抜けかということです。このままでは他国が排除した遺伝子組み換え食品が、日本にどんどん入ってくることになる。当局は至急回収と輸入差し止め処置をすべきである」と強調しました。
 記者会見に同席した食品分析会社ジェネティク・ID日本代表の塙章事務所長は「日本で未承認ものが出たことに正直言って驚いている。データーの信頼性について、所属官庁から要請があれば情報開示もやぶさかでない」と語っています。

 また、未承認の遺伝子組み換えコーンが検出されたスナック菓子会社は、恐らく原材料表示がないため知らずにこれらのコーンを買って使っているものと思われます。
 この点からも農水省がいま実施しようとしている遺伝子組み換え食品の表示では、科学的検査で検出される一部の食品だけでなく、原材料に逆上って検査し、すべての食品に義務表示をさせることが緊急に必要であることを示しています。

市民に一口千円のカンパ訴え

 遺伝子いらないキャンペーンでは引き続き、遺伝子組み換えの混入の実態を明らかにする運動を行う方針で、一口千円のカンパを集め市民の手による検査をすすめていきます。
 農民連食品分析センターで、PCR法の遺伝子組み換え装置が入り、分析ができるようになれば、わざわざアメリカに送って分析する必要もなくなるわけで、一日も早い分析開始が待ち望まれています。

遺伝子組み換えコーン含有についての検査結果
分析依頼主:遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
分析検査実施者:GeneticID社

 商品名メーカー名 
とんがりコーンハウス食品(株)モンサント社Mon830, 831または832の存在を確認。
ポリンキーあっさり味(株)湖池屋モンサント社Mon830, 831または832の存在を確認。デカルプ社DLL25およびプラントジェネティック社PGS MS3の2種類の存在の可能性あり
ドンタコスナチョチーズ(株)湖池屋モンサント社Mon830, 831または832の存在を確認。
プチコーン薄味ヤマザキナビスコ(株)モンサント社Mon830, 831または832のいずれかの存在を確認。デカルプ社DLL25およびプラントジェネティック社PGS MS3のいずれかの存在を確認。
×焼きモロコシ薄味カルビー(株)PCR活性を有するDNAは抽出されたが、遺伝子組み換え体由来の存在の特定はできなかった。
玉三コーンスターチ川光物産(株)ノースラップキング社Bt11、チバシード社Even176またはヘキスト・シェーリング・アグレボ社T14/25の複数品種の存在を確認
○は日本で未承認の品種が特定されたもの、△は承認済み品種が確認
されたもの、×は遺伝子組み換え体の存在は特定されなかったもの


「遺伝子表示」原料段階で義務づけを

消費者団体、農水省に強く要請

 「遺伝子組み換え表示を原料段階で義務づけてほしい」――主婦連合会、全国地域婦人団体連絡協議会など、二十七の消費者団体代表らは、七月三十日、農水省に要請しました。食品表示問題懇談会委員の伊藤康江・消費科学連合会事務局長も出席。農水省食品流通局の吉村馨品質課長、大西詳三食品表示対策室長、川村和彦課長補佐が対応しました。

 農水省は八月にもとりまとめる表示方法について、表示義務を豆腐などごく一部の食品に限り、油やしょう油など大部分は「科学的検証が不可能」という理由で対象から外そうとしています。
 要請で消費者団体代表は、「原料段階では一〇〇%検証が可能。原料が明らかになってはじめて、信頼性がある表示ができるのではないか」と問いただしたのに対し、吉村課長は「(原料は)利用者が確認すべきもの。表示はあくまで消費者の保護のため」などと回答しました。

 伊藤さんは「検知できないものはしない、流通にも物を言えないでは、表示問題は一歩も前に進まない」と行政の姿勢に強い懸念を表明。安田節子・消費者連盟事務局長は「アメリカや大企業のために表示の範囲を限定するもの」と批判しました。
 また、スナック菓子などから未承認の遺伝子組み換えコーンが検出された問題について、農水省は「事実確認を行っている」と述べました。

(新聞「農民」1999.8.9付)
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1999年8月

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