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遺伝子組み換え食品/問われる表示問題

国民の立場か、業界の立場か

WTO次期交渉の焦点にも


 遺伝子組み換え(GM)食品の規制強化、排除の動きが世界各地に広がるなか、日本は表示もせず、野放しで受け入れている世界最大のGM食品流通国です。しかし国民世論はこのまま放置することは許さず、いまどの様な表示をするか―国民の立場か、業界の立場かが鋭く問われ、GM食品問題はWTO協定(世界貿易機関)次期交渉にもかかわる大きな政治問題になってきています。

 中川農相は七月十六日の記者会見で、消費者の要求に答え、表示案を準備すると表明。これに先立つ十三日には、農水省食品表示問題懇談会遺伝子組み換え食品部会が半年ぶりに開かれ、技術的検討を行ってきた小委員会報告を了承。これをもとに部会としての表示案を策定し、できれば八月中にも表示を実施したいとしています。

 マスコミは「表示義務化へ前進」「製造業者に表示義務」などと書き、あたかも国民の要求に答えたものであるかのように宣伝しています。

 しかし農水省が小委員会報告をもとにまとめようとしている表示案は、遺伝子組み換えに使ったDNA(遺伝子)やたんぱく質が残っていると科学的に「特定可能な食品」とし、豆腐やみそ、納豆、煮豆などの大豆食品、コーンスナック菓子、コーンスターチ使用のトウモロコシ食品などの、ごく一部の限られた食品だけを「不分別」として表示を義務化しようというもの。これらは輸入されているGM原料全体の利用状況から見ても多くはなく、中小零細の食品業者が作っているものが大部分です。

 一方、大豆油、コーン油、綿実油やそれを使ったマヨネーズ、ドレッシングなど加工食品、コーンフレーク、液糖、醤油、ジャガイモ加工品などは、「科学的にDNAが特定できない」として表示義務の対象から外そうというものです。

 これらはGM原料の輸入量からみても、食品の種類からいっても圧倒的に多く、大手食品メーカーの製品が大部分です。十三日の表示部会でも、小委員会がまとめた「遺伝子組み換え食品の分類」を、これまで表示に強く反対してきた日本植物油協会など食品業界代表らが、こぞって高く評価していたのが特徴的です。例え表示が実現しても大して影響がないと見ているためではないだろうか。

 さらに農水省の表示案で大きな抜け穴は、日本がアメリカから年間千五百万トン輸入しているトウモロコシ(うち三十〜三十五%はGMが混入)の七割が家畜の飼料です。このほか大豆粕、ナタネ粕などをふくむ飼料は表示対象から除かれていることです。EUでは、飼料、種子、食品添加物、香料まで含むすべてのGM食品に表示の義務化を決めているのとは大違い。

 いま消費者や大多数の国民が求めている表示は、食品を買う時に遺伝子組み換え食品が「使われているのか、いないのか」が分かる表示です。そのためには、加工された食品が科学的分析で特定できなくとも、原材料にさかのぼって国の責任で港などで検査すれば、すべての食品の表示は可能です。

 農水省がいま準備している表示案は、アメリカや食品業界が許容する範囲のものであり、年間で推定五〜六百万トンものGM食品が輸入され、食卓に上っているうちのごく一部にすぎません。こうしたごまかしの表示でなく、飼料を含むすべての食品にGM食品の「使用」「不使用」を明確に表示させるよう農水省や表示問題懇談会委員などに強く要求していくことが重要です。

(塚平)

表示義務化の早期実施を/東京都議会が再度意見書

 東京都議会は、七月十四日の本会議で、遺伝子組み変え食品の表示の義務化を強く要求する意見書を採択し政府に送付しました。

(新聞「農民」1999.7.26付)
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1999年7月

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