政府・自民党案とそっくり全中が示した“米投げ売り”構想全国農協中央会(全中)は七月八日に開いた理事会で、来年以降の減反対策と米の“投げ売り”構想を打ち出しました。政府が自民党に示した案とそっくり同じもの。八月十八日まで組織討議を行い、九月九日に正式に決めるとしています。
豊作になったら米を「消去する」!?とくに米の“投げ売り”構想について全中の方針は「豊作による過剰分を主食用以外に仕向けることにより、完全に市場から消去する仕組みが必要」「出来秋の段階で市場から消去する処理(飼料仕向けを想定)の実施を検討」と、「消去」という言葉を何回も使って積極的に推進する方向を打ち出しています。エサ用に投げ売りするのも「消去」なら、焼却したり、海に捨てるのも「消去」です。豊作は本来、農民にとっては喜びですが、豊作を嫌い、「廃棄処分」と同じニュアンスの処分策を打ち出すこれが農業団体のやることでしょうか! 1俵600円の事実には一言もふれずしかも、飼料用に“処分”(消去)すれば、一トン一万円〜一万五千円、一俵(六十キロ)六百〜九百円になることは、農水省自身が認めています。国民一人が一年間に食べる米が、ラーメンかチャーシューメン一杯並みの値段になる。しかし、全中の「組織討議資料」は、この事実については一言も触れていません。また、当初検討していたと伝えられる飼料用と主食用の差額負担を国に求める方向も引っ込めたまま。 結局、農民にタダ同然で投げ売りさせるか、農協などが勝手に“処分”量を決め、主食用とプール計算してお茶をにごすのが関の山でしょう。 「自主米」値下がり防ぐというが“過剰でも不足でも買いたたく”のが資本のねらいまともに討議すれば、とうてい納得が得られるはずのない対策を全中が打ち出した口実は「自主流通米の値下がりを防ぐ」こと。これは、この三十年間、“食管制度を守るために減反に協力してくれ”“外米輸入を防ぐために安い加工米を作ってくれ”と農民をだまし続けてきたやり方の“平成”版というべきもの。
しかし“「過剰」米を処分して需給を均衡させれば米価が回復する”などというのは、大資本の買いたたきを見ないノーテンキな議論です。
「過剰がなくなれば米価は回復する」というのが本当であれば、今年の米価は上がって当然のはず。しかし、今年五月、六月の相場は、暴落した九七年産の相場さえ下回っているのが実態です(図)。 結局「市場原理」とは、“過剰の場合はもちろん買いたたき、不足の場合も、やっぱり買いたたく”というもの。価格保障を一切廃止し、市場原理にゆだねるこれが新農基法の大きなねらいですが、米価をめぐる現実は、新農基法の先取りです。 米価を回復させる二つの対策の実現をさらに、一俵六百円で投げ売りさせた新米が、飼料用ではなく主食用に回る可能性もあります。大資本の買いたたきのダーゲットは外米並みの価格ですが、現実に“一俵六百円の新米”が実現した場合、これが新たなターゲットになるのは必至です。これでは「米価の回復」どころか、新たな買いたたきを誘い、とめどもない値下がりをもたらすだけです。
組織討議では「やむをえない」「よく分からない」と言って、こういうバカげたことを認めるのではなく、本当に米価回復に役立つ二つの対策を求めようではありませんか。
“全農家に向け大宣伝を”「米投げ売り」緊急事態で農民連が全国代表者会議「三百万戸の全農家に米投げ売りの事実を知らせる大宣伝に全力をあげよう」――七月八日、農民連は全国代表者会議を衆院第二議員会館で開催。二十七都道府県から約七十人の代表が参加し、今後の運動方向を確認、たたかいの意思統一をしました。政府は、農産物の価格保障全廃を明確にした新農基法の先取りとして、豊作で「過剰」になる新米を一俵(六十キロ)六百円で投げ売りしようという政策を全中を先頭に立てて強行するかまえです。こうした日本農業の根幹にかかわる緊急事態のもとで、全国代表者会議が開かれたもの。
会議では「まさか一俵六百円なんて信じられない。ケタを間違えているのではないか」などという反応がほとんどで、事態が農協関係者や農民に知らされていない状況が各地の代表から浮き彫りにされました。
(1) 全農家に事態を知らせる大宣伝をする。すべての単協を訪問し、共同の運動を呼びかけ、請願署名を訴える。消費者にも大いに知らせる。
最後に小林代表は「二十一世紀は食糧不足になることは明らかだ。われわれは物を大いに作り、他階層の人たちとも共同して、この歴史的な事態に対して勇躍してたたかっていこう」と訴えました。
米投げ売り構想中止を秋田県連がさっそく県、農協などに要請秋田県農民連は七月九日、米の投げ売り強要の問題について、県(佐々木清勝農政部長)と県農協中央会(小松正一会長)に緊急に申し入れ、懇談しました。佐藤県農民連委員長は、政府と全中が米の投げ売り構想を進めていることを具体的に説明し、(1)政府・全中・全農に対し、この構想の検討をやめ、ミニマム・アクセスの削減こそ優先すべきとの意見を大至急あげること、(2)県民の世論を高めるために協力・共同の運動に取り組むことを要請し、県中央会には緊急国会請願署名への協力を申し入れました。 これに対し、県も中央会も「まだ具体的な資料や方針がおりてこないが、こうした事態になると大変なことになる」と理解を示し、「農民連の気持ちと県の気持ちは同じだ」と答えました。また、小松県中央会会長は、七月十六日に全県農対策部長会議を開いて態度を決めたいと答えました。 このあと、記者会見を行い、マスコミ各社にこの異常事態について説明、農民連が全力をあげて阻止運動を行うことを表明しました。
(新聞「農民」1999.7.19付)
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[1999年7月]
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