遺伝子組み換え作物ノー「科学の商品化」に警告、日本の大豆づくり運動に期待立ち上がる世界の科学者メイワン・ホー博士と会見して〈下〉 杉田史朗(農の会・理学博士)世界の種子独占ねらう大企業いま、科学者たちに、大企業がさまざまな攻撃をしています。英国では、ジャガイモの研究をしたプスタイ教授を突然停職処分し、公の場での研究発表の場を奪うということがおきました。その処分に対し、ヨーロッパの研究者が、抗議のために立ち上がりました。ホー博士は、そのメンバーの一人です。大企業は、生物の遺伝子や種子にまで特許をはりめぐらし、世界の農業支配を始めています。種子に特許がかけられ、農民が作りつづけていた作物が、ある日突然、お金を払わないと作ることができなくなる事態も起きています。大企業が生命を私有財産にし、生命科学の商品化をしています。科学者がビジネスに支配されているのです。 科学者は沈黙してはならない本来の科学者は、人間にとって重要な研究をすること、自然界の未知な現象を解明することが、主な仕事です。しかし、科学の商品化が進むと、ビジネスにとって不利な研究を、科学者がしなくなります。その結果、科学が本来持っている、危険予測の機能が働かなくなります。特に生命科学の分野では、この科学の商品化が、最も貧しい国の飢餓状態をさらに悪化させています。ホー博士は、「企業封建制度」「企業帝国」などの言葉を使い、この科学の商品化に対して警告を発しています。 日本でも科学の商品化が進み、遺伝子組み換え技術に対して、はっきりとした意見を持った科学者がほとんどいません。ホー博士は、「意見をはっきり言わない科学者は、企業の道具となって行動している」と、厳しい批判をしています。日本の科学者も、ヨーロッパの科学者から、本当の科学とはなんであるのかを学ばなければなりません。 講演では、生物学の考え方、特に、遺伝子が生物の全てを決定しているという還元論的な誤りの指摘、環境と生物と遺伝子を有機的に考える、正しい自然観に基づく生物学の創造が求められているということにも触れました。 世界が注目している日本の運動ヨーロッパでは、EUは遺伝子組み換え作物の使用を凍結する方向に動き始めました。食品への表示も義務づけられ、レストランのメニューにまで表示規制が実施され、違反者には罰金が課せられます。ホー博士に、日本の農民に何を期待しているかおたずねしました。「日本の皆さんには、特に大豆づくりをがんばってほしいです。大いに期待しています」とのことでした。農民連の取り組みは、世界の農業・環境を守る人たちから、大いに期待されています。 日本の科学者も、しっかりがんばってほしいと励まされました。世界中の科学者と手を組み、これからも、地球の農業、食料、環境を守り、発展させる草の根運動と共に歩んでゆく決意を新たにしました。 遺伝子組み換え食品の問題に、科学的な裏づけがされるところまで、運動が進みました。一人でも多くの人にこのことを知ってもらい、日本の農業、食料を守ってゆきましょう。私たちの運動は、ヨーロッパ、アジア諸国の人々からも期待されています。(おわり)
(新聞「農民」1999.6.28付)
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[1999年6月]
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