新農基法案仙台、福岡で地方公聴会自給率など批判意見続出
参院農水委員会は六月十五日、新農基法案について仙台市と福岡市の二会場で地方公聴会を開きました。両会場で地元の農業関係者や学者、消費者ら九人が公述しました。 仙台会場では、法案に賛成する立場の農協関係の公述人も含め五人全員が、食料自給率の目標を五〇%にすべきという意見を述べました。
消費者として初めて公述した大松沢照子さん(食糧・農業を考える宮城県各界連絡会世話人)は、アメリカが余剰小麦を売り込むために日本全国でキッチンカーを走らせたり、学校給食にパン食を導入させてきた歴史的な経過にふれた後、アメリカやイギリス、フランス、スウェーデンなど諸外国の学校給食について、次のように指摘。(1)その国の食習慣を学校給食に取り入れている(2)国内農産物の消費を重視し、風土にあった食事を供給(3)家族の食事と学校給食とが連続性をもっている(4)食堂が設置されているなど。そして、日本の学校給食がパンと脱脂粉乳からスタートし、いまでもパン給食が主体になっている実態を明らかにし、農産物の輸入依存政策が食料自給率を引き下げ、遺伝子組み換え食品やO157問題など、安全性に大きな不安をもたらしていることを指摘しました。 賛成の立場の公述人からは、WTO協定の次期交渉について「これまでの米国中心の輸出国の圧力に押し切られてきた。しっかり交渉して成果をあげてほしい」などの要望や中山間地の所得補償を導入するよう要求する発言もありました。 福岡会場では九州大学農学部の村田武教授が、「ウルグアイ・ラウンド農業合意はアメリカなど農産物輸出国の主導で、農産物についても自由貿易体制をむりやり強要するWTO体制に道を開いた」と述べ、農産物価格を市場原理で決めることに危惧を表明し「担い手経営にとっての最大の不安は最低価格保証がないこと」と指摘しました。最後に「農産物輸入国の立場からWTO農業協定の改訂を求めることが明記されてもよいのではないか」と提案しました。 ほかの公述人から、「食料自給率の向上」が法案の修正にもりこまれたことに対して、「具体策がみえてこない」との批判や参院で徹底して審議してほしいという要望も出されました。
「国会の多数で押し切るな」広島・三次農協総代会が決議広島県の三次農協通常総代会が六月十七日に開かれ、「新農基法案を国会の多数で押し切るのではなく、国民的討論を求める決議」が全員一致で採択されました。埼玉・春日部市農委も徹底審議要求埼玉県の春日部市農業委員会でも徹底審議を求める決議を採択しています。
食健連・農民連の緊急アピール各界からの賛同署名続報全国食健連と農民連の緊急アピール「新農基法案を国会の多数で押し切るのではなく、国民的な討論を」との呼びかけに、その後も続々と賛同が寄せられています。賛同者の名前は次の通りです。(敬称略)◇学者・研究者内山実(農業問題研究者)・梅木利巳(九州国際大学教授)・田辺良則(食と農を守る青森の会代表・弘前大学名誉教授)・暉峻衆三(農業・農協問題研究所理事長)・三島徳三(北海道大学農学部教授)◇自治体関係者佐藤一宇(新潟県笹神村村長)・町田拡(新潟県笹神村村議会議長)・今井正(広島県甲田町長)・児玉更太郎(広島県高宮町長)◇農協・農業団体関係者清水清也(ささかみ農協組合長)・清水友行(新潟県笹神村農業委員会会長)・中川皐(福島県営原町市渋佐地区ほ場整備事業換地副委員長)・岩井孝一(千葉県佐原市農業委員会会長)・高木哲吉(千葉・香取共済組合)・所英亮(千葉県多古町農業委員会会長)・西原勝夫(広島・高田郡農協高宮支所長)・新川忠夫(広島県甲田町農業委員会会長・営農集団組合長)・霞農業協同組合(東京)◇その他の団体田畑晏孝(横浜市従業員労組建設支部長)
(新聞「農民」1999.6.28付)
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[1999年6月]
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