「農民」記事データベース990621-409-01

農民・労働者が熱く燃えた6.10共同行動

“農業守れは共通の要求”

霞が関→国会 全国一般労組などと終日デモ、座り込み


・他人事ではない

 「米価が暴落し、卸価格も下がっている。このため賃金が三分の一カットされている。農業が破壊されれば、関連の労働者にも大きな影響が出る」(全国一般労組加盟・城南食糧の労働者)
 「米価の引き下げが続く中で、農家は乾燥機を買わなくなり、今年四月に倒産、六十人全員が解雇された。解雇反対でたたかったが、会社再建はできなかったが、農業を守ることがどんなに大事かを痛感している。農業問題は労働者にとっても他人事ではない」(米、麦などの乾燥機を製造していた東京キャビネットの元労働者)
 「明治乳業は千葉の市川工場を閉鎖し、茨城への移転計画で人員削減を打ち出している。労働者は合理化計画に反対し、地域の経済にも影響があると住民と一緒になって工場廃止に反対している」(明治乳業争議団の労働者)
 農業が衰退する中で、いま農業関連産業に働く一千万人以上の労働者にリストラ・合理化、首切りの攻撃の嵐が吹き荒れ、深刻な事態が各地で生まれています。  

・高まる気運

 農業関連産業の労働者を組織している全国一般労働組合は、解雇やリストラ・合理化反対をたたかうには、農業を守る運動が欠かせないと重視しています。とくに東京・東部地域では東部共同がその先頭に立っています。
 同代表委員の永島盛次さん(全国一般労組副委員長)は「組合には農機具や食品流通で働く労働者が沢山いる。組合の労働者にもすさまじい勢いで農業危機の影響が現れている。農業を守ることが私たちの生活も守る。農民との連帯が非常に重要になっている」と強調します。
 こうした中で六月十日、農民連と全労連や全国一般労働組合との共同行動が行われました。
 共同行動は、早朝の宣伝から夕方まで農水省や国会前での座り込み、交渉、昼の請願デモ、議員要請など多彩に繰り広げられました。農民連から東北、関東を中心に中国まで約二百五十人、労働者も含めると五百人以上が参加しました。  

・巨大な横断幕

 農水省、国会前では全国一般労組の労働者が農民の要求を書いた一枚十万円の横断幕二枚を持って参加、農民連のムシロ旗などが所狭しと林立、農民や労働者が一緒に座り込み、熱い連帯が真夏日を吹き飛ばします。
 農水省前では、労働者と農民が連帯と決意を表明。
 超満員となった衆院第二議員会館会議室では農民連の意思統一集会が開催されました。小林節夫代表常任委員が労働者と農民連の歴史的な共同闘争の意義にふれながら、「次々に襲ってくる悪政に労働者と農民が共同で立ち向かっていこう」と強調。谷口一夫事務局長は今後の具体的な方針を提起しました。
 福島(31人)、静岡(21)からの参加者はそれぞれ帰りのバスの中で「農民だけのたたかいでないことがわかり、非常によかった」「労働者の実態を聞き、他人事ではないとわかった」などの感想が出されました。

労働者と農民の連帯に感激

井野隆一さん(農業問題研究者)の感想

 ひさしぶりに国会行動に参加でき感激しました。とくに今日の行動は、労働者と農民との連帯という、私にとっても大きな願いを示してくれていたと思います。


米1俵600円(ラーメン1杯分)で投げ売り

やっぱり検討中だった!

農民連の追求に農水省認める

 6・10行動に参加した農民連と全労連などの代表は「農民にも最低賃金を保障すること」などを農水省に要請しました。
 代表団が問題にしたのは農水省が史上最大の減反を押しつけておきながら、作況が一〇〇を超えた場合、「過剰米」を一俵(六十キロ)六百円程度でエサ用や援助用に投げ売りさせる構想を検討していることです。
 この問題は五月二十四日付「読売」や昨年十二月十七日付「商系アドバイス」が報道していたもの。
 最初は「そんなことは検討していない」ととぼけていた農水省側ですが、農民連などの追及の前に、事実上認めました。以下、やりとりを紹介します。

 農民連「新聞報道は事実か」
 農水省「エサ用、援助用という具体的な用途に踏み込んだ検討はしていない。『新たな米政策』では、生産者団体が主食用以外に処理する機動的な対応について自主的に検討することになっている」
 農民連「具体的な用途については検討していないというが、主食以外の用途といえば、エサ用、援助用、加工用以外にないではないか。しかも新聞はエサ・援助しか書いていないが、これはミニマム・アクセス外米の用途である加工用を“聖域”にするものではないか」
 農水省「現段階では具体的に検討していない。秋に来年以降の生産調整対策を決めるが、そのときに総合的に考えて決めたい」
 農民連「エサ用の場合、いくらになるのか」
 農水省「一トン一〜二万円だ」
 農民連「トン一万円だと一俵六百円だ。国民一人が一年間に食べる米が、ラーメン一杯分だ。こんなばかげた検討はやめるべきだ」
 農水省「生産者団体の検討を待って決める」
 農民連「米の関税化も全国農協中央会を踊らせて押しつけたが、米一俵六百円というべらぼうな悪政も全中・全農に責任を押しつけて強行するつもりなのか」
 農水省「……」
 農民連「韓国では、米の作況次第でミニマム・アクセス米の輸入量を変えているではないか。史上最大の減反を押しつけたうえ、デタラメな『作況指数』にもとづいて米を投げ売りさせるなどというばかげた検討をやめ、せめて豊作になったら外米の輸入をやめることぐらいは検討すべきだ」
 農水省「……」

 都合が悪くなると黙り込み、ひたすら「生産者団体」を隠れみのにする無責任ぶり。しかし秋の“新減反政策”の決定に向け、一俵六百円などという途方もない悪政を押しつけようとする政府の姿勢は明白です。
 また農協系統の「検討」がカギを握っているとすれば、これは私たちの手が届く問題。広範な農協関係者と話し合い、新聞「農民」を普及して、こんな悪政を葬ろうではありませんか。

(新聞「農民」1999.6.21付)
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1999年6月

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