農民連、国会前で座り込み新農基法案徹底審議を要求全国一般労組員も参加・交流
新農基法案の審議がヤマ場を迎え、政府・自民党は強引に衆院を通過させようという緊迫した情勢の中で、五月二十六日に中央公聴会、翌二十七日に農水委員会が開催されました。農民連は二十六日、徹底審議を求めて国会前で座り込むとともに、公聴会を傍聴したり、農機具メーカーのリストラ・解雇反対などでたたかっている全国一般労働組合と交流したり多彩な行動を展開しました。
米麦の乾燥機などを製造していた農機具メーカーの倒産で解雇された中山六郎さんも座り込みに参加。四月二十日に倒産し、解雇されるまでは全労連・全国一般東京地方本部東部合同労働組合の副委員長。中山さんは「農民連の方から農業が大変だとは聞いていたが、われわれとは関係がないと思っていた。まさか解雇されるとは思っていなかった。中小の農機具メーカーはいま深刻な事態に陥っている。新農基法は農業の関連産業の労働者にとっても他人事ではない。ともに頑張ろう」と決意を表明。
衆院第二議員会館の会議室で開かれた農民連と全国一般労働組合との交流会には約三十人が参加。小林節夫代表常任委員に続き、同労組の吉村書記長は「基幹産業である農業が破壊されていくと、脱穀機や農産物のハカリメーカーなど農業関連企業の経営危機で、失業問題が深刻になっている。あらゆる産業で雇用問題が起きている。憲法二十五条がうたっているように労働者や農民の健康で文化的な最低限度の生活を守るためにも大きな運動にしていきたい」とあいさつ。 参加者は今後とも交流し、学習し連帯していくことの重要さを確認、六月十日の新農基法問題での共同行動を成功させることを誓い合いました。
自給率向上、強く主張衆院農水委中央公聴会開く衆議院農林水産委員会で五月二十六日、「食料・農業・農村基本法」(新農業基本法)について中央公聴会が開かれ、八人の有識者や農業団体関係者らが公述人として出席。このうち六人が法案に賛成、二人が反対の立場から意見陳述を行いました。公聴会では、賛否いずれの公述人も食料自給率向上を強く主張、農業団体関係者の多くから経営の安定や農地の保護を求める意見が続出しました。
反対の立場から公述した河相一成東北大学名誉教授は、新農基法は「国民的にも国際的にも必要最低限の条件に適応していない。食料自給率の低下は日本政府の責任であり、国の責任と具体的目標数値を明記するべきだ」と主張しました。また自給率向上には「国内生産の絶対量」の増大が必要だとして、農民家族経営の育成、価格支持こそ重要であると発言、農業生産と農村を守るには政府による大幅な財政支出が欠かせないと述べました。 また辻井博京都大学院教授は、法案は「市場原理主義を各国一律に押しつけるWTO協定、米の関税化を前提としたもので日本の農林業破壊の枠組みになる」と反対を表明。「次期交渉では日本はWTO協定の改定に真剣に取り組み、農業食料政策は“国家自決権”をとるべきだ」と強調しました。 このほか檜垣徳太郎全国農業会議所会長、久保英資JA和歌山副会長は、法案に賛成の立場をとりつつも「自給率の向上には農地をこれ以上減少させてはならない。集落営農への国の助成が必要」(檜垣氏)、「中山間地の農業を政治の力で救って欲しい。多面的機能の具体化と兼業農家を含めた家族農業の保護を」(久保氏)と主張。信田邦雄北海道農民連盟委員長は法案の修正を求めて「米価は暴落、稲作安定対策の効果も非常に薄い。条件不利地域も含めて農家経営の安定を」と述べるなど、痛切な要望が相次ぎました。 その一方、「JAグループの意見が最大限にとりいれられている」(原田睦民全中会長)、「不測時対策として危機管理が盛り込まれたのを評価する」(生源寺眞一東大大学院教授)、「貧乏がないのが日本の農村の特徴。農業政策は特定の階層の農家に選定するべき」(佐伯尚美日本農業研究所研究員)などと発言する公述人もいました。
(新聞「農民」1999.6.7付)
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[1999年6月]
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