新規就農への支援なくさないで
多様な担い手の育成こそ
地域農業再生の力に
徳島県板野町
石川五重(いつえ)さん(52)
給付金活用し新規就農して8年
2012年に、民主党政権下で始まった青年就農給付金制度。自民党の政権復帰以降は名称変更や支援内容の切り崩しなどもありながら、地域の農業の担い手育成に大きな力となってきました。この就農支援給付金制度を活用して、2015年に就農した徳島県板野町の石川五重さん(52)もその一人です。
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道の駅「いたの」での出荷風景 |
「子どものころから農家になるのが夢でした」と語る石川さん。2015年に17年間勤めた教員を退職し、無農薬栽培の田んぼ40アールとブルーベリー園をお母さんから引き継ぐ形で就農しました。給付金制度を活用するために、新たに農地も借りて、ブロッコリーを栽培。また敷地のあちこちに散在する柿やイチジク、栗、梅のほか、地域の農家が生産した果物も活用して、年間を通してジャムに加工、販売しています。
また地域の知り合いの生産者やクラフト作家などと協力して、マルシェを年に4回開催。この他にもフェイスブックや](旧ツイッター)などを活用して、観光ブルーベリー園やジャガイモ、栗などの収穫イベントの情報発信に利用しています。また少量ながら小麦を作ったり、みそづくりをしたりと、「いろいろなものを作りながら、この里山そのものの豊かさを消費者と共有し、交流できる農業をめざしています」と、石川さん。
県の「農業指導士」に認定
今では地域農業の担い手として
町役場に就農相談に初めて赴いた際には、「旦那さんの扶養にでも入って、農作業もボチボチやったらどうですか」などと言われたこともあったそうですが、22年7月には、徳島県の「農業指導士」にも認定されました。
この制度は、新規就農者への指導や大学生の研修の受け入れなどの次世代育成、先進技術の受け入れなどに向けて県が創設しているもので、県内では現在70人余が活躍中。「指導する立場には程遠いですが、会合には地域農業をなんとかしたいという農業者が集まり、多くことが学べるし考えさせられるんです」と、謙遜しきりの石川さんですが、指導農業士認定はまさに県が認めた地域農業の担い手ということに他なりません。
いま国会で審議が始まった「食料・農業・農村基本法」改定案では、新規就農支援制度そのものがなくされようとしています。
石川さんは、「私自身、新規就農支援には本当に助けられました。もしこれがなかったら、農業は始められなかったかもしれません。大きな農家にも小さな農家にも、それぞれのニーズに合った支援があって、地域に多様な担い手が育つような農政であってほしいです」と、要望を語りました。
(新聞「農民」2024.3.25付)
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