「農民」記事データベース20240311-1592-04

食料・農業・農村基本法改定案の
閣議決定に抗議し、農と食の
再生に役立つ基本法を要求する

2024年2月27日
農民運動全国連合会 会長 長谷川敏郎
(談話)


 一、政府は2月27日、食料・農業・農村基本法改定案を閣議決定し、国会に提出した。

 その内容は、現行基本法制定以来の農産物輸入自由化や農業生産基盤破壊の農政に何の反省もないまま、国連が「戦後最大の世界的食料危機」を宣言しているさなかに食料自給率向上を放棄し、新自由主義を貫徹し、さらに本格的に農業・食料をアグリビジネスにゆだねる方向に踏み出したものである。

 改定案は、国民への食料供給をさらに不安定にし「飢餓の国」へ陥れる、事実上の「新法」と言って過言ではない。

 一、とりわけ、国民の強い要求で現行法に盛り込まれた「食料自給率の目標」は25年間、一度も達成されることはなく、「その向上を旨として」政府が施策を展開するという規定は実行されなかった。

 改定案は、その検証を欠いたまま、「食料自給率の目標」を「その他」の指標に混ぜ込み、事実上、その向上を放棄する条文になっていることは到底許されるものではない。

 いま、農民連は「食料自給率向上を政府の法的義務にする」国民署名を進めているが、改定案は全く逆行するものである。

 現行法制定当時、41%あった食料自給率は38%まで低下し、自給率目標から乖離(かいり)するばかりでなく、国産供給熱量は1048キロカロリーから850キロカロリーへ2割も激減している。これは、これまでの農政が、諸外国では当たり前の新規就農者支援や農産物の価格保障・所得補償、国民への食料支援制度の構築を放棄してきたからにほかならない。基本法改定案は、日本農業の現実を全く顧みることなく、国民の食と農の危機に対する不安にこたえるものとは程遠いものである。

 一、さらに重大なのは、岸田首相の強行する「戦争をする国づくり」と軌を一にした「食料供給困難事態法」を基本法改定案と抱き合わせで提出していることである。「いざという時は農民にイモを強制的に作らせ、国民はイモを食べて飢餓に耐える」という、まさに戦時食料法そのものである。

 一、日本の農業は、長い歴史の試練を受けながら、国民食料の供給、資源の有効利用、国土の保全、国内市場の拡大等、国民経済の発展と国民生活の安定に寄与してきた。

 いま求められているのは、国民の食料は国内で可能な限り生産して食料自給率を高め、地域の生態系を守り、疲弊した地域社会を再建することである。この方向こそ安定した日本経済を築く道である。

 農民連は、基本法改定案の閣議決定に抗議するとともに、農と食の危機を憂える広範な国民や諸団体と連帯し、日本農業再生と食料の安定供給に役立つ基本法の実現を要求して全力を尽くす決意である。

(新聞「農民」2024.3.11付)
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2024年3月

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