「農民」記事データベース20240304-1591-01

国内河川・地下水からも検出

PFASってなに?

有機フッ素化合物


フライパンなど日用品にも
体内に蓄積しやすくコワイッ

 PFASとは?
 どんな物なのか

 今、各地で「PFAS(ピーファス)」による汚染が深刻になっています。PFASとは1万種以上もの有機フッ素化合物の総称です。

 水に溶けやすく分解されにくい特徴があります。様々な種類がありPFOS(ピーフォス)、やPFOA(ピーフォア)、PFHxSなどが開発されています。

 アメリカで開発
 世界へ広がる

 1938年にアメリカのデュポン社が開発した滑りやすく分解しづらい「テフロン」がPFASの始まりです。アメリカ軍が導入した消火剤にPFOSが使用され、各国へ広がりました。

 防水スプレーやフライパンのフッ素樹脂加工、ハンバーガー等の包装紙、カーペットや衣類の防水防汚処理、化粧品やスマホのコーティング、消火剤や様々な工場の生産現場での研磨剤や表面処理などにも使われています。

 放出されると
 どうなるのか

 水に溶けやすいので、地下水や河川に溶けだし、水や土壌を汚染します。「永遠の化学物質」とも呼ばれるほど壊れにくいため、環境中に長くとどまります。汚染された土壌でできた農畜産物を食べ、汚染された水を飲むことで、体内に蓄積します。

 PFOSはヒトの体内での半減期は5年と長く、摂取をやめても95%が排出されるのには40年かかります。

農民・消費者の命に関わる重大問題

 人体への影響は
 実際の汚染は

 PFASは人体にどんな影響があるのでしょうか。国際がん研究機関(IARC)は、PFOAを「ヒトへの発がん性がある」グループ1に、PFOSは「ヒトへの発がん性の可能性がある」グループ2Bに分類しています。また、子どもの免疫や出生時の体重に有害な影響を与えることも研究で指摘。潰瘍性大腸炎や脂質異常など他の疾病も関連性が疑われています。

 アメリカではウエストバージニア州でデュポン社の工場から排出されたPFASが周辺環境を汚染。周辺住民や同社のテフロン生産ラインの社員など7万人近くが、がんなどの疾病とPFASの関連性を認められました。さらに約3500人が救済を求めて提訴し、6億7千万ドルを支払うことで和解しました。

 日本でも市民のグループや全日本民主医療機関連合会(民医連)のみなさん、京都大学の小泉昭夫名誉教授、原田浩二准教授らの研究で大阪の摂津市(ダイキン工場の周辺)や米軍横田基地のある東京都の多摩地域で汚染が確認されています。

 摂津市では周辺農家の農地が汚染され野菜からも高濃度のPFASが検出。井戸水は飲んでいないのに血中からも高濃度のPFASが検出されたことで野菜からの移行が疑われます。多摩地域では地下水が汚染され全市町村の住民の血中からPFASが検出され健康被害が懸念されています。

 政府は、下水汚泥の肥料活用推進を進めていますが、佐賀県産の汚泥肥料から高濃度のPFOAが検出され、農政にも大きくかかわる問題となっています。

 世界と日本で
 規制の状況は

 アメリカやヨーロッパではPFAS規制の動きが進み、PFOSやPFOAなど代表的な物質は規制済み。すべてのPFASについても規制が検討されています。アメリカは水道水の規制も23年に強化しました。

 日本でもPFOS、PFOAは製造・輸入・使用が禁止され、今年6月からはPFHxSも同様に規制されます。一方で水道水の水質基準は緩いままです。


農民連食品分析センターが検査開始

幅広い調査に協力を

 農民連食品分析センターでは今回、水の検査体制を整えました。日本で規制される3成分と、全米アカデミーズが「健康に影響の恐れ」と評価した4成分の計7成分が対象です。

 サンプルの水を500ミリリットルのペットボトルに採取し、冷蔵便で送っていただければ検査が可能です(採取方法や料金の詳細は表をご覧ください)。

画像

 すでに試験的な調査を開始しており表にその一部を掲載します。多くの地点で検出が確認されました。

 農地汚染を受けた農家が離農に追い込まれるなど、PFAS汚染は、営農にも大きな被害をもたらします。何より農家を含めた国民の命に関わる重大な問題です。

 分析センターを活用し、幅広い調査を呼びかけます。

(新聞「農民」2024.3.4付)
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2024年3月

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