食料自給率
向上こそ国民多数の声
放棄・骨抜きはNO!
岸田政権の新農業基本法案
新農基法を「もぬけの殻」法にするな
新農業基本法案の全貌(ぜんぼう)が明らかになりました。
岸田内閣は昨年12月27日に新農業基本法案の概要を示す9文書を決定しましたが、驚くべきことに、文書には「食料自給率」という言葉も、若い担い手を増やすための「新規就農者支援」という言葉もありませんでした。当初案が自給率を抹消することをねらったことは厳然たる事実であり、政権内部で多少の手直しがなされたとしても、自給率向上の放棄・骨抜きをねらう「もぬけの殻」法になりかねない危険は残ったままだといわなければなりません。
現在の基本法では基本計画で「食料自給率の目標」を定めるとし、「自給率目標は、その向上を図ることを旨とし」て定めることになっています。「向上」は農協が自給率向上1000万署名を進め、農民連など、国民の運動が後押しして国会修正で盛りこまれました。
しかし、カロリー自給率は基本法が動き出した2000年の40%から38%に落ち込み、基本計画の目標も一度も達成したことがありません。そのうえ、「食料自給率」という言葉を禁句にすることをねらった――。
いま国民の強い批判をあびている「裏金」問題の本質は、法律を作る国会議員が違法行為を犯したという問題であり、犯罪者集団というべき自民党政権に政策や法案を提案する資格があるのかが問われているのです。自給率向上を骨抜きにし、「空砲」ならぬ「空法」のような最悪の新農業基本法案しか提案できない自民党政権に資格はありません。
食料自給率をめぐる激しいせめぎあい
「えーっ!新農業基本法では自給率を向上させるはずではなかったの?」――。新農業基本法案提出を前に、食料自給率向上をめぐって、4つの勢力が激しくせめぎあってきました。
(1)あわよくば「食料自給率」概念の抹消をねらう勢力(首相官邸、アメリカ、財政制度審議会)
(2)自給率を「指標の一つ」に格下げし、「自給率目標」ではなく「自給率その他の食料安全保障の確保に関する目標」に変質させることをねらう勢力(農水省当局)
(3)自給率「向上を図ることを旨」として定めることを名目的に残すことを要求する勢力(自民党農林族)
(4)自給率を思いきって引き上げることを強く願っている国民こそが多数派勢力。
(1)の勢力は国民運動でかちとった自給率目標を亡き者にする100%改悪派で、(2)(3)の勢力はその亜流にすぎず、実態は「自給率放棄・骨抜き派」と、自給率向上を農政最大の目標に掲げて取り組む勢力との対決です。
14日に明らかになった新農業基本法案は、自給率放棄を掲げた(1)が国民の批判をかわすために引っ込んだように見せかけ、(2)と(3)の折衷案によって自給率向上の責任のがれをねらうものです。
ヤバイ! 岸田政権の
新農業基本法案
自給率向上は政府の義務 責任のがれを許さない
中身は▼「自給率目標」を「食料安保目標」に変質させて副次的な扱いにし、▼「自給率向上」は名目的に残したものの、政府の義務ではなく、「農業者その他の関係者が取り組むべき課題」にすりかえ、▼自給率向上のために政府がとるべき施策の国会提出を廃止し、インターネットなどでの公表にとどめるものです。
異常に低い自給率の実態をおおい隠し、自給率を向上させる政府の責任を放棄することは絶対に許されません。
農民連は自給率向上を政府の法的義務にする国民署名に全力をあげ、1月の通常国会開会以降、毎月署名提出行動を行って、国民と野党の共同を進めています。
亡国農政を許すのか、自給率を向上させ、日本の食と農の再生をめざすのか。行く末は国民署名の大運動と、これを背景にした国民と野党の共同にかかっています。
ミサイル、軍拡よりも青年の新規就農支援を!
岸田政権の方針に青年の「新規就農支援」が欠落していることも大問題です。
「今後20年間で、農の担い手は現在の約4分の1(120万人→30万人)に減少し、農業の持続的な発展や食料の安定供給を確保できない」と言いながら、ロボットやドローン、AI(人工知能)を使って「生産性」を上げる「スマート農業促進法案」で乗り切るから大丈夫として、青年の「新規就農支援」を放ったらかし。
しかし、ロボットとAIばかりで農民のいない農業をめざす政治で大丈夫なはずはありません。
24年の新規就農支援予算はわずか121億円。400発も爆買いする巡航ミサイル「トマホーク」23発分、大型輸送ヘリの単価216億円の半分にすぎません。
新農業基本法案の要綱
◆基本計画では「食料自給率目標」ではなく「食料自給率その他の食料安全保障の確保の目標」を定める
◆「目標は、食料自給率の向上その他の事項の改善が図られるよう、(政府ではなく)農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める」
◆自給率向上のために政府がとるべき施策の国会提出を廃止し、インターネットなどでの公表にとどめる
自給率わずか0・8%アップ
政府の「食料安保目標」の実態
岸田内閣が昨年12月に改定した「食料安全保障政策大綱」では、6年後の2030年までに、作付面積を小麦9%、大豆16%、粗飼料32%増やすとしています。一見もっともらしい目標です。
しかし、これで上がる自給率は小麦+1・4%、大豆+0・4%、飼料+4%。加重平均するとカロリー自給率は6年後に37・6%から38・4%へ、わずか0・8%上がるだけです(表)。政府の「食料安保目標」は、しょせんこんなものです。
(新聞「農民」2024.2.26付)
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