特産の梅栽培と養蜂の複合経営で
地域の農業と循環を守っていきたい
埼玉
越生町で新規就農準備中
寺田篤哉さん(33)
養蜂は地域資源を生かせるのが強み
駅伝のケガ治療契機に蜂に興味
埼玉県越生(おごせ)町に移住して新規就農の準備を進めている、さいたま市出身の寺田篤哉さん。駅伝の選手だった高校時代にけがの治療で蜂針療法を受けたことがきっかけで、養蜂家への道を歩み始めました。
梅の木40本がある17アールの農地と巣箱を置くスペースとして40アール借り、ミツバチ約60群を飼っています。
大学卒業後、福島県内のハチミツ販売会社勤務や、青年海外協力隊としてモザンビークでの養蜂指導、帰国後にマラリアで九死に一生を得るなど紆余(うよ)曲折を経て、就農に向け埼玉県に相談し2020年から県の農業大学校に入ります。「蜂と相性が良いと思って花栽培の過程を選択しました。実際には受粉すると花が枯れてしまうので、相性が悪かったのですが」
農業大学校で越生町の梅農家を紹介され、「授粉用の蜂を外部から購入しており、養蜂家がいるとうれしい」と話を聞いたことがきっかけで、梅と蜂の複合経営をめざすことに。越生町への移住に踏み切りました。
22年からは県の「明日の農業担い手育成塾」を利用して農業次世代人材投資資金(準備型)を受給しながら実地研修を開始しました。道の駅などにハチミツを出荷し、24年には農業次世代人材投資資金(開始型)に移行し本格的に就農することになります。
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冬は梅のせん定作業があります |
販路の確保で農民連が助けに
農民連との出会いは母親(新日本婦人の会会員)がとっていた産直ボックスでした。「いいものをまともな値段で取引しているのを見て、自分のハチミツを扱ってもらえないかと相談しました。当時はハチミツが売れず困っていたので本当に助かりました。つながりでリピーターのお客さんも増えました」
「その土地にしかない蜜が取れるなど、養蜂は地域資源を生かせるのが強みだと思います」と話す寺田さん。「梅やゆずの開花時期には農家のところに巣箱を貸し出しています。『受粉してくれて助かる。若い人ががんばっているのだから、自分もがんばらなければ』と地域の農家に言ってもらえてとてもうれしいです」と話します。
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ハチの世話をする寺田さん |
高齢農家の梅林も引き継いで
「越生は中山間地で、農業だけで生活するのは大変です。ミツバチとの複合経営がモデルとなって就農者が増え、後継者不足の梅農家を引き受ける人が増え、町の環境維持や地域循環に一役買えれば」と意気込む寺田さん。本格就農を機に蜂を増やし、高齢で耕作できなくなった梅林も積極的に引き継ぐ決意です。
(新聞「農民」2024.2.5付)
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