「農民」記事データベース20240129-1586-06

福島 安達地方農民連会長
佐藤佐市さん洋子さん夫妻が
県農業賞を受賞

新規就農者の受け入れと定着支援評価され


若い移住者が少子高齢化の「救いの神」に

 福島県二本松市の佐藤佐市さん(安達地方農民連会長)、洋子さん夫妻が昨年、第64回福島県農業賞を受賞しました。有機栽培での野菜や野菜苗生産による経営の安定化とあわせて、新規就農者の受け入れと定着支援が評価されたものです。

画像

 福島県二本松市の東和地区(旧東和町)では2005年の合併後に「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」が発足し、新規就農者の受け入れを始めました。

 売り先は有機農業研究会からの紹介や協議会の直売所、JAなどにつなげています。

 佐市さんも協議会の役員として、受け入れに協力し、10数人の研修を受け入れ、7人が地域の農業後継者として定着しています。

 新規就農者はまず、地域の農家で半年から1年の研修を受けます。当初は農家に住み込んだり、地域の空き家で共同生活するなどしていましたが、現在は市から1カ月当たり7万円の生活費と家賃の半額、研修先にも1カ月3万円の補助が出るようになりました。

 「消防団など地域の活動にも入ってもらって、『酒癖が分かるまで』交流しています」と佐市さん。受け入れ先の農家が、農地や空き家もあっせんし独立に備えます。初期には貸し出せる耕作放棄地がほとんどなく、荒れた桑畑を開墾して用意したこともありました。

 「独立して自分ですべての作業をやるようになって、初めて問題点が見えることが多いです。そうした時には手助けをするようにしています」と独立後も気配り目配りを欠かしません。

 安達地方農民連やふくしま東和有機農業研究会で3台のトラクターを無償貸与しているほか、二本松有機農業研究会から機械の貸し出し、国の経営発展支援事業などの活用で就農者への支援も行っています。

 支援を行うようになったきっかけを佐市さんは「ウチも後継者がおらず、このまま自分で終わらせるのももったいないという思いがありました。地域でも手伝ってくれる若い人はいるが自ら就農する人は少なく、やる気があって移住してくる人の方がうまくいくのではないかと考えました。結果として彼らが少子高齢化の地域の『救いの神』となっています」と振り返ります。

農民連の未来育てる取り組みにも

 佐市さんの親身な姿勢が伝わり、新規就農のみなさんの多くは農民連の仲間にも加わっています。

 新規就農の支援にとどまらず、地域の農民連の未来を育てる取り組みへと発展しています。


新規就農者のコメント

有馬隆文さん(59)

 福島県出身で神奈川県から移住。キュウリ、ハウストマト、カボチャ、葉物野菜を栽培

 農業のことを全く知らず、農村の生活のイメージが全くわきませんでした。佐市さんは独立してからも様子を見に来て、気にかけてくれていました。農家の生活に欠かせない技術の指導と販売先も紹介してもらい、感謝しています。

画像
佐藤佐市さん(前列中央)を囲んで前列左から渡邊さん、佐藤さん、柳瀬さん、後列左から塩田さん、有馬さん、新田夫妻

塩田幸治さん(44)

 東京から移住
 露地キュウリを栽培

 もともと定年帰農を考えていましたが、震災をきっかけに復興の手伝いができればと福島への移住を決断しました。佐市さんのところでは研修のほかに農の雇用事業で2年間働きました。せん定の仕方や成長具合の確認など、折々で相談に乗ってもらいました。身近に相談できる人がいるのはありがたいです。

柳瀬聡一郎さん(50)

 東京から移住
 キュウリやハウストマト、ニンジンなど栽培

 移住説明会で東和のブースがたまたま目に入り、一度訪問して地域の人とご縁ができたので、その縁を大切にしようと移住を決めました。

 その判断は正しかったです。こちらから相談する前に、佐市さんはこまめに来て面倒を見てくれました。飲み会などイベントにも声をかけて、地域に溶け込む手助けをしてくれました。

渡邊竜馬さん(40)

 横浜から夫婦で移住
 23年から佐藤さん宅で研修中

 仕事で福島に出向したことが、福島への移住につながりました。地域おこし協力隊で東和にきて23年から佐市さんのところで研修中です。

 この夏は佐市さんの隣の畑が借りられたので指導をしてもらいながら、すべての作業を自分一人でやりました。佐市さんはいろんな作業の経験をさせてくれますし、一人で効率よく作業する方法も教えてもらったので、これからその教えが生きてくるのだと思います。

新田弦五さん(43)、久美子さん(38)

 22年末に岡山から移住

 今見えている美しい風景が1秒に70アール消えているという中で、自分にできることが農業ではないかと思い就農を決意しました。

 今年4月から新規就農するために家を探していたところ、偶然佐市さんの向かいの家でした。佐市さんにはこの土地のことから心のことまで相談しています。

 どんな場面でも態度が変わらず、受け止めてくれるのが佐市さんの魅力だと思います。

 農民連では私たちの世代を一堂に集めて話をしたい。みんなでつながって、これまで引っ張ってきた佐市さんたちのやってきたことを次につなげていく必要があると思います。

(新聞「農民」2024.1.29付)
ライン

2024年1月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2024, 農民運動全国連合会