「農民」記事データベース20240115-1584-08

食を中心とした交流の場

山形から
横浜市の保育園で産直市


庄内産直センター
生産者の声を消費者に

 神奈川県横浜市泉区にある苗場保育園で12月17日、「山形庄内ふるさと産直市」が開かれました。山形県の庄内産直センターの生産者・職員、総勢17人が1泊2日の行程で現地へ。自慢の農産物や加工品の販売を通して保護者や地域の消費者と交流を深めました。

 高層団地がひしめく住宅街の一画にある保育園の園庭。木々の下、遊具の横にはところ狭しと産地直送の品々が並びます。毎年恒例の「りんご10キログラムお値打ち価格販売」には整理券を求めて朝から長蛇の列が。今年は「ふじりんご」を140箱用意しました。

 開場とともに園庭は人でいっぱいに。おそろいのピンク色のTシャツを着た保育園の職員の皆さんも、生産者と一緒に大忙し。「芋煮できたてですよ!」「あったかい玉こんにゃくどうぞー」「新米あるよ〜」と活気ある声が飛び交う中で来場者をもてなしました。

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おすすめの食べ方を説明しながら野菜、果物、餅、米油、ジュースやジャムなどを販売しました

 始まりは子どもの安心・安全

 今回で25回目を迎える苗場保育園での産直市。生産者が直接訪れての開催は4年ぶりです。

 36年前、「子どもたちに安心・安全な食べものを」という思いで横浜市内の保育園が始めた、庄内の農民連との産直運動。苗場保育園もこの運動に当初から加わり、米を中心とする給食食材を庄内産直センターから仕入れ続けています。

 園庭の一角につくられたステージでは、生産者が園長先生や職員と一緒に登壇し、日々の取り組みを紹介しました。

 鶴岡市で稲作と肉牛の飼育を営む佐藤千紘さん(42)。保育園で使われる米も、佐藤さんたちが作る除草剤農薬成分1回のみ使用の化学肥料不使用米です。「父と2人で雑草の手抜きをするが、近年の高温の影響でその作業が追いつかない。牛たちも高温には弱い。農業者にとって切実な問題になっている」と紹介。

 同じく鶴岡市でナシやラ・フランスなどを栽培する果樹農家の安野翔さん(34)も「今年の8月は経験のない高温で木が枯れてしまう、と本当に心配で、品質も落ちてしまった」と話しました。

 保育園にみそやだだちゃ豆を届けている渡部正一さん(70)は「私たち農家はいろんな困難を抱えている。でも農業は収穫や食べてもらえる喜び、生きがいのある素晴らしい仕事。どうすれば日本の農業を守っていけるのか考えて語ってほしい」と思いを伝えました。

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生産者を代表してスピーチした(左から)渡部さん、佐藤さん、安野さん

 顔の見える関係 今の社会でこそ

 熱心に聞き入る来場者に向けて、苗場保育園の栄養士の日下なをみさんが新聞「農民」の記事などを使い、ネオニコチノイド系農薬について解説し、「食生活のことを一緒に考えましょう」と呼びかけました。

 苗場保育園園長の本田りえさんは「私たちは保育園で働く者として、子どもたちの“食べる”をずっと大事にしてきた。その中で続けてきた、生産者の皆さんとの顔が見える関係をもっと多くの人に広げたい。今の社会、農業の現状を知れば知るほど、そう強く思います」とまとめました。

 農民連が取り組む「食料自給率向上を政府の義務に」を求める署名への賛同も会場内で呼びかけられ、135人分が集まりました。

 会場を訪れていた女性は「息子が入園1年目。食にこだわっていると知ってこの園を選んだが、今日あらためて話を聞いて、夫と『家でもできるところから始めよう』と話しました」と語ってくれました。

 今回の産直市を終えて庄内産直センターの小林隆範組合長は「自分たちが生産した農産物を販売することは、生産者の自信や向上心にもつながっています。産直市は保育園や地域の方々を巻き込んだ“食”を中心とした交流の場になっています。様々な問題や取り組みを知ってもらうことから、安心が生まれてくるのでは、と思っています」と話しました。

(新聞「農民」2024.1.15付)
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2024年1月

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