MA(ミニマム・アクセス)米の赤字
過去最大の674億円に
水田活用・中山間地予算はカット
関連/休刊のお知らせと新年号のお届け
国内農業の予算は削減
輸入米赤字は垂れ流し
累積赤字は6351億円
食料安定供給特別会計の22年度ミニマム・アクセス(MA)米の運営損益が、前年の474億円から200億円も増加し、674億円となり、過去最高の大赤字となりました。また、MA米輸入開始以来(1995年〜2022年)の「赤字」総額は6351億円にも上ります。
22年産の国内産備蓄米の政府買入価格は60キログラムあたり1万1千円という安値であったのに対して、アメリカ米の買入価格は3000円以上も高い60キログラムあたり1万4169円となり、22年度の買入総額も過去最高の982億円にも上りました。
国内では、米価暴落を放置し、備蓄米ですら安値で買いたたき、生産調整の強化ばかりを押し付けています。
さらに水田活用の直接支払交付金を削減し、来年からは飼料用米交付金まで減額するなど、ひたすら必要な予算を削り続けている政府が、国内需給に不要なアメリカ米をひたすら輸入し続け、莫(ばく)大な赤字を垂れ流し続ける異常をこれ以上、放置することはできません。
22年は国際穀物価格の高騰と、アメリカで中粒種米の主な生産地であるカルフォルニア州で過去最悪と言われた干ばつにより、作付面積と収穫量の減少で、アメリカ国内でも尋常ではない価格高騰が起きました。
その結果、毎年測ったように36万トン程度が輸入されていた、アメリカ米の輸入実績も24万トンにとどまることになりました。
しかし、その代わりにタイ、オーストラリアなどの計約10万トンで穴埋めし、何が何でも77万トンを死守しているのです。
MA米の赤字、過去最大
日本の農家から予算をはぎ取り
外国産米につぎ込む財務・農水両省
21年産国産米は農協の概算金・内金が6000円台まで下落するなど、米価は大暴落しました。しかし、政府は米価対策を拒否し続け、その結果、21年の水田作経営の農業所得は1経営体当たり1万円(前年比94・4%減)、「時給10円」という、米農家が米作りを続けられない状態に追い込まれました。
全国の米農家が塗炭の苦しみにあえいでいたにもかかわらず、政府は、国内需要のない77万トンのMA米輸入だけは確実に実行し、莫大な赤字を垂れ流し続けているのです。
さらに、農水省は財務省の言いなりになり、畑作物を生産している水田への「水張り」の強要、多年生牧草の交付金カットなど、水田活用の直接支払交付金の改悪を進め、交付金を110億円削減してきました。
また、23年度予算では中山間支払交付金の予算261億円に対して、必要額がわずか2億円超過した結果、一部の加算措置の一律カットを強行。この暴挙によって、実施組織や自治体で大混乱が起きています。
長年、麦・大豆、そばや菜種、飼料用作物の生産に力を注ぎ、水田転作を定着させ、また、中山間地域の条件不利地域での農地の維持・管理に地域の合意形成と計画策定を行いながら、懸命に取り組んでいる多くの農家の努力を踏みにじるものです。
MA米ストップは急務、
農家を支える政策・予算への転換を
「需要に応じた生産」とは財務・農水両省ともに、予算・政策説明に使用する「呪文」です。過剰や価格下落は生産者の自己責任だとし、市場(企業)が求める農産物を、求める条件で供給することが経営の安定につながる、とまで言っています。
しかし、需要のない77万トンもの外米を輸入し、赤字を垂れ流し続けているのは政府です。需要がない外米輸入は今すぐにでもやめられます。
そもそも輸入の義務もなく「機会の提供」であるミニマム・アクセスの全量を輸入している国は日本だけです。外米輸入をストップさせ、日本の農家を直接支援する予算と政策へ転換をめざしましょう。
休刊のお知らせと新年号のお届け
次号の12月25日付は休刊にします。
次週は2024年1月1・8日付合併号(新年号)を1週間早くお届けし、年末年始の配達はありませんのでご了承ください。
(新聞「農民」編集部)
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(新聞「農民」2023.12.18付)
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