「農民」記事データベース20231211-1581-12

原発事故
昨年の最高裁不当判決に

ノーモア原発公害市民連絡会が発足


司法の信頼性問われる事態
問いかけるスタートに

ドイツは脱原発、日本はなぜ逆行

 昨年6月17日、最高裁判所は、福島原発事故被害者が東京電力と国に賠償と原状回復を求めた4つの裁判で国の責任を認めない判決を出しました。

 大津波が予見できたかどうかの判断をせず、国がとりえた対策を防潮堤のみに限定。対策しても事故は防げず国に責任はないとする、とんでもない判決であり、多くの専門家が反対の意見書を後続裁判に提出しました。

 そして「あの原発事故を防ぐことはできた!国の責任を認めさせるために最高裁6・17判決をただそう」と専門家や各分野の著名人が賛同し、発起人51人、特別賛同人67人が集まって、11月17日、「ノーモア原発公害市民連絡会」が発足、記念シンポジウムを開きました。

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国会議員会館で行われたシンポジウム

 代表世話人でジャーナリストの金平茂紀さんはビデオメッセージで6・17最高裁判決は「歴史的恥辱だ」と批判。「これまでも間違った最高裁判決を運動で正してきた。6・17判決も出しなおさせよう」と呼びかけました。

 元福井地裁判事の樋口英明さんが「福島原発事故と国の責任 6・17最高裁判決をただす」と題して講演しました。樋口さんは「過去の出来事の判断をできない人が将来に責任を持てるはずがない」と指摘。

 最高裁判決の問題点などを解説したうえで、「憲法76条3項『すべて裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される』の条項が危機的状況にある。このままでは司法への国民の信頼が失われる」と批判。「最高裁自ら判決を改めるのが唯一の道だ」と訴えました。

 また集会にはオンラインで、今年4月に原発ゼロを実現したドイツから、政府の原発問題倫理委員会のメンバーだったミランダ・シュラーズさん(ミュンヘン工科大学教授)が参加。

 ドイツではウクライナ・チェルノブイリ原発事故後に再生可能エネルギーの促進が始まり、福島原発事故後にその動きが強まりました。2030年までに再エネ比率を80%とする目標や商業ビルへの太陽光設置義務、再エネの追加料金を国民ではなく国が負担するなどの方針を決定。またウクライナ危機を受けて、温室効果ガスの排出ゼロを50年から45年に前倒しすることなどを報告しました。

 まとめで代表世話人の寺西俊一さん(一橋大学特任教授)は「チェルノブイリから1000キロ離れたドイツは脱原発に踏み出し、8750キロ離れた福島の事故で確かなものとなった。福島から首都・東京が250キロしか離れていない日本ではなぜ原発回帰が進むのかという問題が改めて浮き彫りになった。市民連合発足を市民レベルで問いかけるスタートにしよう」と呼びかけました。

(新聞「農民」2023.12.11付)
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2023年12月

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