東北農団連が交流会開催
農民連を大きくして、農政変えよう
元丸紅・柴田氏「いまは収奪農業」
11月23、24日に宮城県松島町で第39回東北農民運動交流集会が開かれました。4年ぶりのリアル開催で、東北6県から82人が参加。
開会にあたり東北農団連会長で宮城農民連会長の嶺岸若夫さんは、「厳しい農業情勢の中でたくさん交流・学習し、私たちの運動を大きく広げていこう」とあいさつしました。
元丸紅経済研究所の所長で、資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんが基調講演を行いました。
再生産可能な適正価格を
柴田さんは現在の世界の穀物価格の高騰は一時的なものではないと指摘。2008年以降から続く「需要ショック」とコロナ禍以降から続く「供給ショック」で長期化していると解説しました。重要なのは需要ショックで、これは途上国の経済成長による所得の向上で起きた食生活の変化によるもので、以前の水準に戻ることはないと強調。この変化にいち早く対応したのが中国だと柴田さんは指摘し、「輸入を拡大し続けて、今では世界の穀物在庫の半分、小麦で52%、トウモロコシで62%が中国にある。同時にこの20年間、国内の生産基盤を固め『農業強国』づくりを進めている」と解説。
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「世界の食料高騰の中で農産物が安いのは日本だけ」と語る柴田さん |
これに対し、日本の農政は価格高騰を一過性とし、2012年の第2次安倍政権以降、徹底した「農業の外部化」を進めてきたと指摘。輸入に頼る農政では価格・量・品質が保障できなくなった事態に対して「食料・農業・農村基本法」見直しの答申は「あらゆることが不明確」と指摘し、「今の農政は、生産コストの価格上昇に対して根本的な対応をせず、農産物の価格低迷を放置するという収奪農業だ」と厳しく批判しました。
その上で、まずは直接保障を行い、再生産可能な適正価格を実現するための法整備、中山間地のような条件不利地域への補償・支援の拡充による農家の所得向上と多面的機能の発揮が「基本法」見直しでは必要だと述べました。
柴田さんの講演に続いて藤原麻子全国連事務局長が報告。食料自給率向上と農政を変える仲間づくりを広げるために、あらゆる視点・角度で学習会を実施していこうと呼びかけました。
新規就農への取り組み強化を
2日目の分散会では各グループで経営、地域、担い手など様々な問題と取り組みを交流。
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分散会では参加者同士で日々の努力を語り合いました |
新規就農の課題について、若い世代の参加者が「新規就農者を増やす、続けていける、活躍できる仕組みを作らないといけない」と発言。それを受けて「新規就農希望者に認知される魅力・強みをつくって発信しないといけない」「多様な農業形態を持つ会員のもとで研修できる体制をつくりたい」などの発言がありました。その中で、福島県で自治体・農協・農民連が一緒になって新規就農者のサポートをする体制が始まったことが紹介されました。
インボイスの問題では、「よく分からずインボイス登録した免税農家がたくさんいる。来年3月の申告で消費税を納めないといけないことを会員・非会員に関わらず広げないといけない」などの意見が出されました。
最後に来年の開催地・福島の佐々木健洋事務局長があいさつし、来年5月に狙われている宮城県・女川原発の再稼働を許さない運動を東北で連帯して広げようと呼びかけ、「農政を変える運動を農民連が大きくしていこう」と締めくくりました。
(新聞「農民」2023.12.11付)
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