タネを守り未来を守ろう
シヴァ博士
食料と平和を守る
つながり大きくしよう
秀明(しゅうめい)自然農法ネットワーク(法人本部は滋賀県甲賀市信楽町)設立20周年記念イベントが11月11日、東京都多摩市にある恵泉女学園大学で開催されました。同ネットワークは、自然堆肥のみでの自然栽培方法(秀明自然農法)の実践と普及を目的に設立。記念イベントは大阪での開催に続き、東京でも「守ろう つなごう 未来を彩る希望のタネ」と題して、国内で生産される野菜の種の9割を輸入に頼るとされる、日本の種問題に焦点をあてたシンポジウムを開催しました。
秀明自然農法ネットワーク
20周年イベント開催
開会あいさつと活動報告を行った小林一雅理事長は、「私たちは全国約1万人の会員の皆さんとともに心を込めて作ってきた農産物・加工品を消費者に届けてきた」と紹介しました。
コロナ禍以降の現在の様々な問題への解決は、「種の自家採取から始まる『自然順応・自然尊重』の生き方が大きなカギになると確信している」と語りました。
ザンビアでも昔からの農法で
この日は海外からも2人の活動家が招かれました。
アフリカのザンビア共和国のバーバラ・ハチプカ・バンダさん(ザンビア自然農法開発計画代表)は、地元で自然農法を通じて農村部の女性や若者の生活改善・向上をはかる活動を実践。近年、自国で深刻な問題になっている土地の砂漠化について「残念ながら慣行農法がこれを助長している」として、豊かな土壌を再生させる自然農法の中での種を守る取り組みが重要だと語りました。
また、地元の女性農民組合と秀明インターナショナルがパートナーシップを結び、ザンビアの女性農民たちが支援を受けていることも報告。秀明インターナショナルがザンビアで初めて自然農法を広げた際、「新しい農法ではなく、地域に根差した昔からのやり方を皆でやっていこう、と言われて私たちは希望に感じた」と述べました。
農家は平和と健康の生産者
インドの世界的な環境活動家で物理学者のヴァンダナ・シヴァ博士は、グローバル企業による種の独占について、「種を“コモディティ(=商品)”化してはいけない。単一の種で莫大な利益を得ようとする側と、多様な種を守り食料と平和を守ろうとする側のたたかいであり、私たちは大きなつながりをつくらないといけない」と表明。
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講演した(左から)ハチプカさんとシヴァ博士 |
日本の人口の農業従事者が占める割合はわずか約1・4%という現状に対してシヴァ博士は、「しかし食べ物を食べる人の割合は100%ではないだろうか」と提起。「多様性が確保された食料生産が気候危機や健康の問題への対処法となる。農家は単に食料生産者ではなく平和・健康の生産者だ」と力強く述べ会場から大きな拍手が起こりました。
会場の大学キャンパス内では、日本各地で秀明自然農法により作られた農産物・加工品のマルシェが並び、来場者の列ができました。
学校給食と種と地域農業考える
午後は4つの分科会が開かれ、東京大学大学院の鈴木宣弘教授による講演や、自然農法家で人気ユーチューバーの今橋伸也さんによる講座などが行われました。
「学校給食をオーガニックに」という分科会では、立憲民主党の川田龍平参院議員をメイン講師に開催。在来の種を守るための法案「ローカルフード法」について川田氏が報告し、「地域ごとに重要な品種を決めて、種とりから地域内消費という持続可能な農業の流れを支援する法律がローカルフード法」だと解説しました。
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分科会で講演する川田議員 |
川田氏は法律制定を見据えると同時に、自治体ごとの条例制定も目指す中で、学校給食との関わりを重要視。「食育による食生活の定着はおとなになっても継続する、という研究結果もある。子どもの健康と地域の種を守り、循環型農業に見直すことを皆さんと実現させていきたい」と述べました。
(新聞「農民」2023.12.4付)
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