「農民」記事データベース20231120-1578-12

DPJ
(デトックス・プロジェクト・ジャパン)が
4周年シンポ開く


ネオニコ系農薬のいま――
人体・環境中へ拡散している

 日本国内の農薬をめぐる問題を考える市民団体「デトックス・プロジェクト・ジャパン」(DPJ)設立4周年記念シンポジウムが10月31日、国会議員会館で開催されました。DPJは市民、消費者や生協などの個人・団体からなる共同プロジェクトで、この日はオンライン併用で4人が講演しました。

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講演した(左から)安田さん、八田さん、星さん、木村―黒田さん

 神経かく乱作用のある農薬

 神戸大学大学院農学研究科の星信彦教授は、ネオニコチノイド系農薬(以下、NN)の影響に関する最新の研究について解説。まず農薬というのは医薬品と異なり、人による臨床試験を行っていない、動物での試験のみで「安全」としている化学物質だと説明。

 「この農薬は、ほ乳類の脳、自律神経をかく乱する作用が一番大きな特徴」と解説する星さん。自身の研究室で発達期のマウスを使った試験で、ジノテフラン(NNの1つ)を投与すると多動性症状が確認されたことを報告しました。

 「化学合成農薬が使用されるようになって70年ほど。私たち自身が農薬を摂取し続けたらどうなるのか、誰も分かっていない。NNはEUでは予防原則から全面禁止が広がっており、台湾・韓国・中国も部分規制を始めている」と指摘しました。

 毒性試験の不十分さを指摘

 医学博士で環境脳神経科学情報センター副代表の木村―黒田純子さん(DPJ顧問)は、「農薬再評価」制度の問題点と課題について講演。これまで登録された農薬は3年ごとに「形式的な確認手続き」のみで再登録されていましたが、2018年農薬取締法改訂に伴い、15年に一度、安全性を確認する再評価制度が導入されました。

 再登録に必要な毒性試験は、旧式の試験方法が多く、新しい試験方法が含まれていないと木村―黒田さんは説明。「環境ホルモン作用、高度な発達神経毒性などが考慮されていない。試験結果は知的財産保護のため、一部しか公開されないことも問題」と批判。

 また、再評価で必要な最新の科学情報となる「公表文献」の収集・選択を農薬企業が実施しており、企業に不都合な文献の削除や不当な評価があると指摘しました。

 法制度が農家に農薬使用を強要

 食政策センター・ビジョン21代表の安田節子さん(DPJ共同代表)は、水稲栽培が盛んな全国12地点で、水道水からジノテフランが検出された研究を紹介。ジノテフランは、斑点病を引き起こすカメムシ防除に使われていると指摘。「農産物検査法で着色粒の規格があり、異常に厳しく斑点米を取り締まっている。米の等級が下がると買取価格が下がるので、農家はカメムシ防除せざるを得ない」と現状を伝えます。

 安田さんは、色彩選別機で斑点米は防げるとして、「農産物検査の着色粒規定を廃止して、農家に強いている農薬散布をなくそう」と訴えました。

 農民連食品分析センターの八田純人所長は、DPJの活動と食品分析センターとして行ってきた検査結果や経過を報告。「DPJ設立以前は、市民レベルでの体内残留農薬を調べる取り組みはほとんどなかった」とし、21年9月から人の尿中の農薬を調べる検査を開始し、377検体のうち357検体(95%)から農薬が検出されたと報告。NNでは出荷量1位のジノテフランが80%の検体から検出と一番多く、出荷量2位のクロチアニジンは60%から検出され2番目に多い、という結果でした。八田さんは「濃度は高くないが、食品や環境中に多く含まれるNNほど多く検出された。またDPJでは『こども検査プロジェクト』を進めており、学校給食を食べる子どもたちからも農薬が検出されている」と述べました。

 まとめを行った印鑰智哉共同代表は「農薬を使う農家が一番苦しんでいる。どうすれば農薬を使わなくて済むのか、という食の市民自治を展開していこう」と述べました。

 立憲民主、国民民主、共産、社民、無所属の国会議員14人が連帯あいさつを行いました。

(新聞「農民」2023.11.20付)
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2023年11月

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