農民連の歴史と運動、専従者の役割を学ぶ4年ぶりの役員・専従者研修会開く
農民連は11月1、2の両日に4年ぶりとなる「役員・専従者研修会」を東京都内で開催。5人の講師がそれぞれのテーマで講義を行いました。
第1講義では真嶋良孝政策責任者が農民連の歴史や求める農政について講義。真嶋さんは世界有数の人口扶養力を持つ日本農業が、旧農業基本法以降「選択的拡大政策」によって生産力を奪われてきたことを指摘。 「水田の力を生かすことこそ自給率向上のカギだ」と述べ、価格保障・所得補償の拡充と青年就農者への支援などを求めていくことを呼びかけました。 第2講義は岡崎衆史国際部長が、今の国際情勢と国際農民組織ビア・カンペシーナ(LVC)について解説しました。 LVCは反グローバリズムで団結した農民組織で構成員は全世界で2億人以上。日本唯一の加入組織が農民連です。 岡崎さんは食と農に関わる国際政治は、LVCの要求運動が実って大転換し、近代化・変革の対象であった小規模家族農業の価値が再評価され、保護・振興すべき存在へと変わったと指摘。 「日本では家族農業の再評価が始まる前に逆流という困難にさらされているが、LVCの仲間から寄せられた『あなたたちの中に私たちがいて、私たちの中にあなたたちがいる』というメッセージを大切にしていこう」と話しました。 笹渡義夫副会長は第3講義で農民連の要求運動と組織作りの基本を報告。「農家は攻撃にさらされ、自己責任論で泣き寝入りを強いられている。学習を通じて要求を自覚することで初めてたたかうエネルギーが出てくる。要求が高まった時を逃さず働きかけることが重要」と述べました。 また組織を大きくすることなしには要求実現はできないと強調。役員や専従者が「共育ち」でともに成長し組織の前進をつくろうと呼びかけました。 来住誠太郎税金対策部長は第4講義で「農民連の記帳簿なしでは仲間づくりはできない」と強調。農民連の自主申告運動を説明し、「税対部員は先生ではない。ともに学び合うのが農民連の自主申告運動」と話し現場で話を聞くことが大切だと話しました。 第5講義は長谷川敏郎会長が担当。「そもそも食料自給率は国内農業を守るたたかいが生み出したものだ」と紹介。政府が自給率向上目標を放棄する動きに対し、民主党政権時代のデータから「政治を変えれば自給率は上がる」と指摘し、「食料自給率向上を政府の義務に」の署名運動の推進を呼びかけました。 最後に岡崎さんがまとめを行い、「今日学んだことをもとに学習を深め、人に話すことに挑戦してほしい。緊張感の中でこそ理解が深まる。ともに学び合い、農政を変える仲間づくり運動を成功させよう」と呼びかけました。
参加者の感想から最も大事なことは現場にある福島県北農民連 阿部恵実さんこの2日間で農民連の歴史を学ぶことができました。今の農業は高齢化が進み、次の担い手もいないのが現状。耕作放棄地も増え、国は人が生きる糧となる作物を蔑(ないがし)ろにし、軍事国家まっしぐらです。 私が今回講義を受けて心に残ったのは、第3講義の専従者について「最も大事なことは現場に足を運ぶこと」という部分です。 今年10月、米農家の会員さんが病気で倒れてしまい、米の収穫ができなくなって困っていると、県北農民連に相談がありました。そこで県連と連携し、事務局と米農家の役員で、米の収穫のお手伝いをさせていただきました。 なかなか触ることのないコンバインを操作させていただき貴重な体験をしました。 米農家の会員さんには「助かりました」と感謝され、「会員さんの役に立てて良かったな」と思いました。まさしく、“最も大事なことは現場に足を運ぶこと”を体現できたのではないかと思います。 私は農民連に入って日が浅いので、税金について、そして会員さん巡りをして会員さんの農業の知恵や今どんなことで悩んでいるのか、お話を聞いて交流を深めていきたいです。農家の皆さんのために助け合える農民連組織にできたらいいなと思いました。
農業・国民切り捨ての政治をあらためて認識滋賀県農民連 斉藤佳伸さん私はこれまで、戦後日本の農政の歴史を理解していると思っていましたが、年を重ねることにより忘れていて、繰り返し学習する必要性に今回気付かされました。農業基本法の改悪が今までに2度行われ、1回目は日米安保体制のため、2回目の現行法はWTO(世界貿易機関)体制のため、そして今度は、アメリカ軍と自衛隊が一緒になって戦争をするための改悪を企てています。 歴代自民党政治は、アメリカと財界にゴマをすり「今だけ金だけ自分だけ」で農業も国民も切り捨てる政治を続けてきたことを確信しました。 世界的にも食料不足で、自国の食料は自分たちで賄うようにしないと、今後の日本の発展はありません。 県連としても農政の歴史をいま一度学習し、農政を農民・国民の手に取り戻せるように運動の輪を広げていかないといけません。 税金学習で農家とのつながりを広げ、組織拡大をしていく重要性をさらに深めました。
「ともに育ち」を胸に、これからも奈良県農民連北和センター 中島裕子さん日頃の活動の再確認と農民連・農業政策の歴史なども勉強し、参加できて本当に良かったです。第1講義では国による自給率向上の放棄、他国と日本との青年就農支援の差にショックを受けました。 第2講義では国際農民組織ビア・カンペシーナについて、農家の権利を大切に、大きさに関わらず全ての農民が平等に対話できる運動があり、そこに農民連も参加していることに感動しました。 第3・4講義では私自身の専従者活動・税金対策部員活動と照らし合わせながら、再確認・再決意ができる内容でした。 第5講義では提言をみんなで勉強し、農民連ができること、農民連しかできないことがあると感じました。 今回の研修会で一番心に残っている言葉は「共育ち」です。 日々専従者として悩むことは多いです。毎日やることがいっぱいで、大変で専従者を辞めたいと思うこともありますが、その度に組合員の顔が浮かびます。自分だけではなく、悩んだ時は役員に報告・相談し頼る。 全国に同志がいることを忘れず、これからも専従者としてがんばりたいと思います。
(新聞「農民」2023.11.20付)
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[2023年11月]
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