「農民」記事データベース20231106-1576-03

農水省 食糧部会

低米価と水活交付金の
改悪で離農が加速


水田の減少顕著に

 10月19日に食料・農業・農村政策審議会食糧部会が開催されました。

 9月25日現在の2023年産米の予想収穫量が作況100、7万トン減の662万トンとなり、7月の基本指針で184万トンとされていた来年6月末在庫が7万トン減の177万トンとなりました。

 今年の年間需要見通しを682万トンとしており、23年産米では需要が満たせない状況となっています。古米は「邪魔物」どころか、「お宝」の状態になっています。

 「極端な気象現象」が常態化している現在、来年産米の生産量・品質次第では、端境期に需給がひっ迫する可能性さえあります。

 高温・干ばつで品質悪化、 減収対策を

 各地の今年の農協概算金等も1000円前後の引き上げに加え、早期の追加払い(北海道)、観測史上最高気温となった今夏の高温障害による3等・規格外の大量発生を受けた等級間格差の縮小(新潟県)など、集荷量確保と生産者手取り減少への対策などがとられています。

 その他の産地でも、品質低下による減収緩和のために自治体による支援を行う動きが加速するものと思われます。要求行動をさらに強化することが求められます。

 危機が加速する水田の作付け面積の減少

 さらに食糧部会に出された作付面積の動向は、日本の水田農業の衰退が加速され、深刻な状態に陥っていることが浮き彫りになっています。

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 21年産で130万ヘクタールあった主食用米の作付面積は、在庫減らしを目的にした生産調整強化により22年産は5万2千ヘクタール減の125万ヘクタールとなりましたが、23年産は同じ生産目標であったにもかかわらず9千ヘクタール減の124万ヘクタールとなり、卸売業者も主食用米の生産基盤の弱体化を危惧しています。

 しかも、今年は水田農業のさらなる危機が進行しています。

 22年産では主食用作付けが5・2万ヘクタール減少する一方、加工用米や飼料用米をはじめとした戦略作物の作付けが3・8万ヘクタール増えていました。

 しかし、23年産では主食用9千ヘクタール減に加えて、輸出用米やWCS(ホールクロップサイレージ稲)を除きすべての作目が減少し、水田作全体で3・8万ヘクタールの減少となっています。

 減少が顕著なのは飼料作物で、22年産7万ヘクタールから1・7万ヘクタール減の5・3万ヘクタール、そばは2年間で3500ヘクタール減の2・5万ヘクタール、22年産では2・6万ヘクタール増となった飼料用米は8千ヘクタール減の13・4万ヘクタールなどとなっています。

 農水省の説明では麦・大豆・飼料作物・そば及び菜種は「畑地化促進事業」の一次採択分の面積は含まない、としていますが、一次採択は170億円、1万ヘクタール程度ではないかと推測され、作付面積3・8万ヘクタール減の説明にはなりません。

 自給率向上に背を向け農家をつぶす農水省

 これらは、低米価と離農、農地の受け手がないことからの耕作放棄の広がりなどがありますが、最も大きな原因は、次の「水田活用直接支払交付金」の改悪によって離農が加速されていると言わざるをえません。

 (1)飼料作物の多年草牧草は10アール当たり3・5万円を1万円に減額。

 (2)麦・大豆・そばなど収量・品質が不良につながる5年間に1回の水張りの強制。

 (3)さらに主食用品種での飼料用米の24年〜26年で1万5千円の交付金減額など。

 水田つぶしやめ農家を支える政策と予算を

 農水省は、食料安全保障の強化や輸入依存の穀物・飼料の国内増産などの掛け声とは逆行する政策改悪・予算カットを続けています。

 食料・農業の危機的状況を打開し、水田つぶしをやめるためには、水田活用直接支払交付金改悪をやめさせ、米も含め麦・大豆などの作物への直接助成を拡充することに加え、「極端な気象現象」を踏まえたすべての農家を対象にした保険制度の構築など、農家が営農を諦めず、国内増産と自給率向上につながる政策と予算を充実させることが緊急に求められています。

(新聞「農民」2023.11.6付)
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2023年11月

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