「農民」記事データベース20231106-1576-01

農民連

東京・世田谷区の学校給食に、
ふるさとネットが有機米提供

千葉県匝瑳市(米農家)佐藤真吾さん


抑草の技術を確立
地域に広げたい

 学校給食に関わる様々な運動が全国各地で取り組まれています。子どもたちに安心・安全な給食食材を、というのもその1つです。

 東京都世田谷区は今年度、学校給食での有機農産物の利用促進を図るための予算を計上。10月から来年3月までに有機米の給食提供を計6回実施します。

 千葉県匝瑳(そうさ)市の佐藤真吾さん(42)は10月に有機米3150キログラムを世田谷区に納入しました。「今後は地域の取り組みとして有機米の栽培を広げていきたい」と話す佐藤さんを紹介します。

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 多古町旬の味産直センター通し

 現在約8ヘクタールの水田で有機米を作っている佐藤さん。栽培する品種はほぼ千葉県の新品種「粒すけ」で、山田錦、亀の尾も作っています。無農薬、除草剤不使用の水田です。このたび、農民連ふるさとネットワークが取引先である世田谷区から有機米調達の打診を受け、ふるさとネットから「多古町旬の味産直センター」会員の佐藤さんにつながりました。

 「生きていることを実感できる仕事がしたい」。一度は企業に就職した佐藤さん。20歳のときに農業の道を選び長野県での研修後、匝瑳に戻り米作りを始めます。「スタートから自然農法に近い考えだった。両親がEM(有用微生物群)を取り入れた施設栽培をしていた影響もあると思う」

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佐藤さんの水田。「大きな水田が広がる匝瑳のポテンシャルは高い」と言います

 草とのたたかい確立した技術

 地域の農業法人「栄営農組合」に入り、慣行農法での米作りを請け負いながら、自身の水田で有機栽培の挑戦を続けます。最初の年に感じた手応え以降は、草とのたたかいだったと言います。

 「この方法なら大丈夫かもしれない、と思った翌年には大失敗したり。結果がついてこない、つらい時期もあった」。10年ほどで技術が段々と固まり、有機栽培の規模を4ヘクタールに広げます。

 佐藤さんは話します。「いろいろ試してきたことを整理すると、複合的なやり方が結果的に“草の生えにくい”水田になることが分かった。初期の除草耕起や肥料を入れるタイミング、水田の状況を見極めて、坪当たりの栽植密度を変えるなど。その前提として水田を均一で平らに整備することが重要」と。「それらができてきたら、草が生えにくい水田になる」と話します。また自分に合った除草機を使うことで、面積もこなせるようになったと言います。

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7月20日、出穂前のイネの根元の様子。草がほとんど生えていません

今度は地元の子どもたちに

 地域で取り組む産地をめざす

 確立した技術で、いま年間40トン生産し、面積当たりの収量も慣行農法より1俵(60キロ)少ない程度です。

 佐藤さんは今後の展望を語ります。「いすみ市の取り組みは素晴らしいし、やっぱりこれを匝瑳市で広げたい」。現在、市内の有機農家と任意団体をつくり、国の「オーガニック産地育成事業」制度を使い、先進地の視察などを地元議員と行っています。「JAや慣行農家の方たちと一緒に取り組みを進めたい。それには行政に入ってもらわないといけない」と働きかけを強めています。地域で支え合うには「国の支援充実が不可欠」とも。

 ふるさとネット事務局次長の種石かおりさんは「世田谷区は来年度以降の取り組み継続と提供回数を増やす予定で、都内を中心に有機米の需要はかなり高まっています」と話します。

 佐藤さんは「今回、世田谷の子どもたちに届けられたが、これをきっかけに地元の給食で地元の有機米を子どもたちが食べてくれる未来を思うとワクワクする」と語ってくれました。

(新聞「農民」2023.11.6付)
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2023年11月

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