寒茶で耕作放棄地を再生!
杉田素之さん(県農民連副会長)ら消費者と
土と太陽の会 静岡 牧之原市
お茶栽培が地域活性化の力に
静岡県牧之原市勝間田(かつまた)で生産者が消費者と手を取り、自然栽培での寒茶(冬の茶葉を収穫して番茶にしたもの。甘くまろやかで優しい味わいのお茶になる)に取り組んでいます。
消費者と共同して自然栽培に挑戦
多彩な茶農家がグループを結成
「寒茶を自然栽培でやる利点は、管理の手間が少ないことです」と杉田素之さん(静岡県農民連副会長=48=)。年5回程度の管理で収穫できると言います。周囲は耕作放棄地が広がっており、土と太陽の会はその一部約5アールを2022年から再生しています。
同会は地元NPO法人が杉田さんなどのお茶農家に呼び掛けてグループを結成。栽培方法も性別も年齢も様々な人が集結し、17年から取り組み始めました。
地元勝間田集落のお茶農家5代目、加藤正直さんは「自分は慣行栽培をしているが、この地域が良くなっていってほしくて参加しています」と話します。
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作業中に笑顔がこぼれます |
生き物との共生の考え方
自分のお茶づくりにも
間渕明日香さん(30)も牧之原市のお茶農家です。「産業としてのお茶づくりと違う側面の、生き物としてのお茶が見え、共生を考えるようになりました。考え方は自分のお茶づくりにも生かせるのではないかと思います」と刺激を受けています。
9月24日には消費者とともに秋のせん定作業を実施しました。
せん定作業は同会メンバーの柴本俊史さん(37)が中心となって行いました。「1本の木を見て風がスムーズに流れるように」とせん定の基準を説明する柴本さん。水と空気の流れを整えます。
お昼や作業後には昨年作った寒茶のブレンドティーや生産者のお茶の紹介と試飲などで交流し、話に花が咲きます。
埼玉県所沢市から参加した石川ます穂さんは「放棄茶園の再生に興味があって、去年の荒れ放題だった茶園のせん定作業から参加しています。今回で3回目くらいですが、来るたびに茶園の様子が変わってきています。お茶を飲んで生産者とお話しできるのが楽しいです」と話します。
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自らのお茶をアピールする間渕さん(奧) |
小学校へ取り組み広げたい
お茶作りの価値 地元に伝えたい
「作る人と飲む人がつながるオンラインお茶会」を企画・運営し、2年前から土と太陽の会に参加している久保昌之さん(53)は「2年たって、毎回のように参加する消費者が出てきてくれました。県外からも人が集まることで、お茶を作ること自体の価値を地元の人たちに伝えたい。小学校で取り組めれば最高の教材になるのでは」と期待します。
「小学校で実践できれば、子どもが自分の飲むお茶を育てる経験もできるし、地域の人が指導すれば、コミュニティーづくりにもつながります。各地域で耕作放棄地の解消から活性化につなげる手段に寒茶づくりがなれば。まずは牧之原市内の小学校で実践できるようにしたい」と意気込む杉田さんたちでした。
(新聞「農民」2023.10.30付)
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