なぜ小規模・家族農業なのか持続可能な農業を学ぶ
国連「家族農業の10年」と連携し、持続可能な社会の実現を目指す、「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)」は10月14、15日、代表を務める村上真平さん(64)の農場研修を行いました。
三重県
村上さんの農場「池の平自然農園」は標高640メートル、奈良県との県境が近い三重県津市美杉町にあります。目前に大洞(おおぼら)山を望み、すぐ後ろには倶留尊(くろそ)山がそびえます。「ここに来て10年以上経つが、毎日のように表情の違う景色が楽しめる」と村上さんは言います。 |
オンライン講座で解説する村上さん |
研修に参加したメンバーは農場案内のあと、手作業での稲刈りと、はざかけを行い、初めてカマで刈る人も慣れた人も、周囲の自然に魅せられながら汗をかきました。
福島県出身の村上さんは、2011年の原発事故を機に、飯舘村から移り住みます。「事故の翌年から、ここで農業をしていた」と話しますが、当初は森の開墾から始めたそうです。自分で家をつくり、農場を広げていき、いまスタッフ1人、研修生1人と一緒に農場をやりくりし、農業宿泊の受け入れ、他地域での農園講師などもしています。
14日の夜に行われたFFPJ連続講座のオンライン講義で「自然の森に学ぶ農業」を実践している村上さんの経験や確信が語られました――。
村上さんから、わらで稲をしばるやり方を教わる農民連本部の岡崎衆史国際部長(左)と鳴島明子事務局員(中央)〈撮影・奧留遥樹さん〉 |
1982年、23歳のときに有機農業を広げるために訪れたインドのブッタガヤという土地は、森がなく、木もほとんど生えていない赤茶けた大地でした。しかし昔は豊かな森と農村が広がっていたことを知り、調べてみると、40〜60年代にインドで起こった緑の革命以前から、風景は今とほぼ変わっていないことが分かりました。「農薬や化学肥料を使い始める前から、農業が自然を壊してしまう営みだったとしたら、この地球上で人は生き続けていけるのだろうか」。村上さんは農業に対する根本的な疑問を持つようになります。
そしてインド滞在中に読んだ福岡正信さんの本と自身の経験から、「本当の意味でずっと続けていける農業をしないといけない」という考えを深め、2001年に帰国後、飯舘村で「自然が与えてくれるものの中で生きていく」ことを目指した農業を始めます。
宿泊スペースも兼ねた農場内の村上さんの自宅(紀ノ川農協・宇田さんによるドローン撮影) |
また、循環するシステムを安定させるには「多様性」と「多層性」が必須になると解説。「森には病気も虫もいるが、大きくは広がらない。それは多様な生物が存在しているから。そして、森には高い木、低い木などが多層になっている。農業にとっての多層性とは、太陽の光と雨を最大限に利用でき、土を守る状態のこと」
大規模に画一的に単一な作物をつくり、有機物を返さない非循環な農業を続けていては、この先の世代に責任が持てないと村上さんは指摘します。ここに小規模・家族農業による小さな農業を各地で取り組むことへの確信があると言います。そしてこの考えは、現在の気候危機の中でより強くなっているとも――。
持続可能という言葉を1つの「ことわり」として理解することが大事と話す村上さん。「手間もそれほどかけずに、十分なものを病害虫の心配なく作れている。いかに自然が与えてくれているか」
池の平自然農園の畑 〈撮影・奧留遥樹さん〉 |
研修に参加した和歌山県紀ノ川農協の宇田篤弘組合長は「農民連が取り組む食料自給率向上署名の運動にも重なる」と話し、「21世紀の水産を考える会」の石井久夫代表理事は「命優先の営みに真剣に向き合わないといけない」と感想を述べました。
近畿大学名誉教授の池上甲一さんは「食べること、働くことの本質を理解するために、早い段階での教育に農作業を取り入れることが重要」と述べました。
災害対策全国交流集会2023 |
日 時 11月12日(日)午前11時〜午後4時
会 場 オンライン開催
参加費 無料
講 演 「関東大震災100年 災害の歴史から何を学ぶか」鈴木浩さん(福島大学名誉教授)
申し込み 登録フォーム(https://x.gd/hTAKM、下のQRコード)から
締め切り 11月2日(木)
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[2023年10月]
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