「農民」記事データベース20230925-1570-01

生産費に遠く及ばない
23年産米価の「上昇」

 9月11日、2023年産米の概算金状況が出そろいました(表)。23年概算金は、肥料・資材などの高騰を背景に、米価下落が始まった20年産水準に回復している程度ですが、前年比で関東産の銘柄では2000円以上の引き上げも見られる一方、北陸コシヒカリは数百円〜1000円程度、東北各県も1000円〜1900円にとどまっています。しかし、20〜21年産と2年連続で4000円前後暴落する前の19年産の水準には戻っていません。


低米価と「極端な気象現象」で
加速する「米作りをやめる」

 大暴落した21年の営農類型別経営統計では水田作の農業所得は1万円(時給10円)でしたが、22年産は若干上昇し、肥料高騰対策などの支援策も講じられたことから、所得は少し増えるのではないかと思われます。しかし、2年連続で米価が上昇したとしても、生産費をカバーする水準には遠く及ばず、米を作り続けることは困難になっています。

画像

 米価水準だけでなく品質・収量でも減収に

 価格保障もなく、生産調整頼み、市場任せの米政策のもとでは米作りが成り立たないことは明白です。戸別所得補償のような価格・所得保障の仕組みがない限り、日本の米作りに将来はありません。来年も米づくりを続けられる農政への転換が絶対に必要です。

 農水省公表の23年産米の作柄概況では、やや良が5道県、平年並み34都府県、やや不良が7県となっていましたが、新潟、富山、秋田、山形などで収穫が進むにしたがって収量減少と3等・規格外の米の大量発生という状況が日々明らかになってきています。

 水稲共済で補償されない被害が多く、国・自治体に直接支援の仕組みを作らせることが必要です。

画像

 低価格米や外米需要で米価抑制の可能性も

 新米取引価格は農民連ふるさとネットワークの扱いでも、関東早生(わせ)新米は前年比2000円程度上回っていますが、北陸早生品種は1500円程度にとどまっています。

 「B銘柄」不足の状況は新米流通以降の現在も継続しており、千葉でも無選別が置き場で1キロ110円となるなど、低価格原料の調達に業者のみなさんも苦労している状況です。

 しかし、この状況は応札ゼロが続いていたオーストラリア産が7月には全量落札となるなど、SBS(売買同時入札)輸入の増加とともに、米価全体の上昇を抑えることにつながる危険もあり、今後も注視が必要です。

(新聞「農民」2023.9.25付)
ライン

2023年9月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2023, 農民運動全国連合会