「農民」記事データベース20230911-1568-01

放出中止が最大の
風評被害対策だ!

汚染水海洋放出
抗議行動 各地で

関連/農民連青年部第31回総会


12年の復興の努力を台無しにするな

 8月22日、岸田自公政権はアルプス処理水を海洋放出することを決め、東電はそのわずか2日後に放出を開始しました。「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」――2015年8月に国と東京電力が漁業者と交わした約束を覆しての放出です。

 全国各地で海洋放出に反対する抗議行動が行われる中、8月27日には福島県いわき市小名浜で全国行動が行われ、福島県内と各地から集まった多くの市民が「国と東電は約束を守れ」と怒りの声を上げました。また31日にはふくしま復興共同センター(以下、共同センター)と原発をなくす全国連絡会の主催で官邸前抗議行動と院内集会が開かれました。この日の行動には福島県農民連をはじめ、千葉、東京、神奈川の各農民連と全国連が参加しました。

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8月27日いわき市小名浜での抗議行動の様子

 漁業者は反対を貫いている

 院内集会では経済産業省への申し入れを行い、福島の声を伝えました。経産省は政府が放出を決定した理由について、「安全性への理解が進んでいる」「漁業者の生業(なりわい)が継続できるように責任を負うという姿勢に理解が進んでいる」からだとしました。

 しかし共同センターの野木茂雄代表委員は、「8月24日に出された福島県漁業協同組合連合会の会長声明の中には『科学的な安全性への理解は深まってきたことも事実』という文章は確かにある」としつつも、「しかしこの声明文の主題は『海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない』と述べているところだ。都合のいい所だけを取って理由とするやり方は到底認められない」と厳しく指摘しました。

 IAEA報告は根拠にならない

 「漁業者への責任を負う」という問題でも、27日のいわき市での抗議行動に参加した新地町の漁師・小野春雄さんは「私たちは海でおいしい魚をとって消費者に届けてきた。賠償金がほしいわけではない」と表明。「賠償では若い人に漁業を引き継げない」という漁民の声も紹介されました。

 アルプス処理水の科学的な安全性について、政府はTAEA(国際原子力機関)が福島第一原発で行った調査報告をよりどころとしています。

 しかし全日本民主医療機関連合会の岸本啓介事務局長は31日の官邸前行動で「それは根拠にならない」と指摘。「福島第一原発のタンク内の処理水の7割以上で、トリチウム以外の放射性物質が基準値を超える濃度で存在し、その2次処理の必要性をIAEAは報告の中で触れていない」と告発しました。

 東電は1回目の放出を8月24日から9月9日まで行うとしています。今年度、約3万1200トンの処理水(タンク約30基分)を4回に分けて放出する計画です。しかし原発の建屋内には今も地下水が流れ込み、溶けおちた燃料デブリに触れ、汚染水が日々発生しているため、実際に排出できるのは差し引きタンク10基分だと言われています。

 事故の最大の教訓は脱原発

 新たな汚染水の発生への抜本的な対策がないまま海洋放出を強行したことにも共同センターの野木さんは重大視します。「海洋放出が福島の復興のためになる、というのは間違っている。これでは問題は解決しない。放出中止が最大の風評被害対策だ」と国と東電を強く批判しました。

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31日の官邸前抗議行動でスピーチする佐々木さん

 31日、福島からの声として発言した福島県農民連の佐々木健洋事務局長は「風評被害というのは本当に恐い…」と言葉を詰まらせました。「12年前の事故の後、農産物の放射能検査など大変な苦労をした。あの日々をまた繰り返すと思うと、漁民の皆さんは本当に苦しいと思う」と話し「原発事故の最大の教訓は原発稼働をやめること。どんな形でも原発を続ける自公政権に反対の意思を突きつけよう」と訴えました。

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31日の院内集会で経産省に福島からの参加者とともに要望書と署名を手渡す野木さん

 経産省への申し入れでは「アルプス処理水の海洋放出は強行しないことを求める緊急要請署名」を紙とオンライン合わせて、7万1617人分が提出されました。オンライン署名はChange.orgで8月2日にスタートし、9月4日時点で14万人を超えています。


農民連青年部第31回総会
▼日時 9月30日(土)午後1時〜10月1日(日)午前11時30分
▼会場 社会医学研究センター1階(東京都板橋区熊野町47−11、東武東上線大山駅徒歩6分)
▼参加費 全日程3000円(部分参加あり、宿泊は各自で確保・負担をお願いします)
▼企画 ・「体験で学ぼう 食料自給率ワークショップ」
    ・海外活動報告「権利から守れる!食と農の明るい未来」
▼申し込み 登録フォーム(https://forms.gle/NQe3rmosgnyF6UN89、下のQRコード)から、または農民連本部(担当・渡辺しんじ)まで

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(新聞「農民」2023.9.11付)
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2023年9月

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