「農民」記事データベース20230904-1567-08

次世代につなげる
いい山・森づくり

広島
庄原市の林業会社に勤める
臼田俊樹さん(39)


行きついたのが自伐型林業

画像  設立して6年目を迎える株式会社フォレストワーカー(広島県庄原市市町)。臼田俊樹さんは入社して3年、主に広報や企画を担当しています。

 「自分たちがやりたい山づくりをするには」―。会社代表の田村栄太さんは、地元の森林組合から独立して、この思いに向き合ってきたと臼田さんは話します。

 林業は木を切って売らないと収入にならないため、育てている間はほぼ助成金を受けとることになります。林野庁の助成金制度の要件を満たすには、定められた間伐率を守り、主伐の際も決められた面積当たりの材積を搬出しないといけません。「いい山、森をつくろうとすると今の制度だけではできない。助成金に頼り続けることにも不安がある。そこで代表の田村が行きついたのが自伐型林業です」と臼田さん。山を崩さない・荒らさない自伐型に対して、斜面一帯を切ってしまう主伐は、豪雨などで土砂災害を引き起こす危険もあります。

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「100年、1000年先へ森をつないでいきたい」と話す臼田さん

 臼田さんが入社したタイミングとほぼ同時に、フォレストワーカーでの自伐型林業の取り組みがスタート。山主の溝口致哲(かずのり)さんの山林7・4ヘクタールを借り受け、モデル林として作業道づくりを進めています。今秋から間伐も実施します。

 造林から58年が経つモデル林。臼田さんは「50年経ったから全部切るのではなく、山主さんの思いが詰まった木を今後も管理できる喜びがあります」と語ります。

 同時に、自伐型林業の取り組みに対して国や県・市の支援はありません。同社では造林保育事業や、個人やお寺などから依頼される特殊伐採(巨木などを根元から切らずに伐採する)を主な事業収入としています。臼田さん自身も木材の6次化を追求し、製品に使われる木の付加価値を高めるプロジェクト(HIBA RINGs)を進めています。「木と自分たちの暮らしがずっとつながってきた庄原が好きです。大事に育てられた、いま山にある木を今後どう生かしていくのか。県の林業課にも自伐型林業への理解と支援を求めています」

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モデル林と山主の溝口さん。自伐型林業は2トン車が通れる道幅を山に整備するので、地盤が強固になります

 7人の社員がいるフォレストワーカー。「自伐だけを事業としてやっていくことはまだ難しいですが、この取り組みを定着させて次世代へつなげていく。“人をつながないと山はつながれない”という言葉を胸に、私たちの代ではそれが最優先だ、と皆で話しています」と臼田さんは笑顔で語ります。


*自伐型林業とは―

 現行林業は植付け→下刈→枝打ち→除伐・間伐を経て主伐(皆伐)を50〜60年のサイクルで行う。自伐型林業は主伐を行わず、間伐を続けながら収入を得て、100〜200年の森をつくる。

(新聞「農民」2023.9.4付)
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2023年9月

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