「農民」記事データベース20230828-1566-06

いますすめるべき
農政は自給率の向上

農民連『提言』パンフを読んで
千葉県柏市・米農家 染谷 茂さん


画像  千葉県柏市の大規模米農家、染谷茂さんは利根川調節池での水田・畑作営農を展開し、借地と作業受託による規模拡大で現在、米150ヘクタール、約20ヘクタールで小麦・大豆などを生産。農地を法人化し、株式会社として営農を続ける中で、直売所や地域・学校での食農教育などを通じて「農業の大切さ・米の大切さ」を発信しています。染谷さんに『新農業基本法に対する農民連の提言』パンフレットを読んだ感想を聞きました。

 農民連の『提言』パンフレット、大事なことがたくさん書かれています。その中でもやっぱり重要なのは、自給率の向上を国が本気で取り組まないといけない、ということだと思います。

 いま政府は自給率を2030年までにカロリーベースで45%まで引き上げるという目標を立てていますが、具体的に何をやっているのか全然見えていません。

 日本の農地をどうするのか、という問題でも、フードテックのような工業的農業などを解決策の1つに考えているのかもしれません。しかし、日本の耕作面積は433万ヘクタール、日本が輸入する穀物や飼料等で必要とする海外の農地は1080万ヘクタールです。合わせて1513万ヘクタールという農地を工場での食料生産でまかなえるのか。

 やっぱり田畑は必要でしょう。私も「もう無理だから何とかしてほしい」と言われた農地を荒らすわけにはいかない、と引き受けています。「日本の農業をどうしよう」という本当の部分が今の農政には感じられません。

 いま政府が「田んぼを畑地化しなさい」というのは米が余っているからですが、それはつまり「小麦が輸入できているから」ですよね。コロナやウクライナ情勢で海運などが滞り、日本にも影響が出ました。日本はウクライナから直接小麦を買っているわけではないのに。輸入に頼る、ということは常にそういう影響を受けるリスクがあります。政府が言う「情勢の変化」に耐えうる農政こそが自給率の向上です。何かあったとき、本当に大変なことになる。

 消費者・国民に農業と自給率向上への理解を

 同時に、消費者・国民に食料や農業のことを理解してもらわないといけません。私が食料・農業・農村政策審議会の委員をしていた当時、このことを発言しました。しかし国の回答は「国民の危機をあおるのは良くない」というものでした。あおるのではなく、様々な形で伝えていかないといけない、ということです。小学校での出前授業で、日本の食文化やお米の大切さを伝えると、子どもたちから「今日の給食は全部食べました」「おいしい・まずいってぜいたくなことなんですね」という感想が返ってきます。話をすれば、感じてくれることがやっぱりある。大事なことです。

 若い世代が農業に魅力を持ち、所得が得られるようにしないと自給率向上どころか、今の自給率すら維持できなくなります。そうなると、困るのは私たち国民です。食料とは、生きていく上での一番の基本。それをしっかり自給しよう、という意識を皆で持つために、私もどんどん発信していきます。農民連も政府への働きかけ含めて、さらにがんばってもらいたいです。

(新聞「農民」2023.8.28付)
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2023年8月

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