自給率さらに低下
自給力も過去最低に
農水省が22年度
食料自給率を発表
農水省の有事メニュー例に消費者も
「ひっくり返るほど驚いた」
農水省は8月7日、「22年度食料自給率・食料自給力指標」を公表しました。
カロリーベースの自給率は前年度と同じ38%でしたが、小数点以下で比較すると37・64%で前年から0・37ポイント低下しました。40%を下回るのは13年連続。生産額ベースの自給率は5ポイントも低下し過去最低の58%となりました。
また、国内生産だけで供給できるカロリーを示す「食料自給力指標」も過去最低を記録。食料自給力指標は、輸入停止などの不測時に国内でどれだけの食料を供給できるかという潜在生産能力を示すもの。
農水省は、指標を「米・小麦中心」と「イモ類中心」の食生活の2パターンで示しています。米・小麦中心の場合に供給できる熱量は1人1日当たり1720キロカロリーとなり、イモ類中心の場合は2368キロカロリーで、ともに減りました(図)。
体重を保つために最低必要なエネルギー(推定エネルギー必要量)は1人1日当たり2168キロカロリーで、米・小麦中心の食生活ではこれを20%下回る飢餓水準です。カロリーの確保を優先したイモ類中心の場合でもわずか200キロカロリー、9%上回っているだけで、労働や運動は無理な飢餓寸前のレベルです。
有時には悪夢のような食卓に…
それではイザという時に私たちの食生活はどうなるのか。農水省は恥ずかしげもなく、悪夢のような食卓像を示しています。「イモ類中心の食生活」の場合、サツマイモとジャガイモが1日3食、朝に食パン半切れ、夕食にご飯1杯、副食は野菜炒め、サラダか浅漬け(表)。みそ汁は見当たりません。牛乳は5日にコップ1杯、卵は1カ月に1個……。
このメニューに「ひっくり返るほど驚いた。ニュースにして広く知らせたい」――東京・府中の新日本婦人の会の会員からは、こんな反響も。
「食料自給力指標」が09年の2786キロカロリーから400キロカロリー、15%減ったことにともなって、メニューの中身は年々乏しくなっています。
たとえば、「焼きイモ2本」は466グラムから376グラムへ、「野菜炒め2皿」は192グラムから132グラムへと2〜3割減。メニュー名は同じでも「ステルス(隠れ)貧弱化」。タンパク質不足も深刻です。
自給率向上を政府の義務に
こういう情けない食生活を避けるには、食料増産と自給率向上で国民の食を守るしかありません。しかし政府は、自給率を下げたままで国民を飢餓に追い込もうとしています。
◆「食料増産と自給率向上に主眼を置く政策をとるな」(財政審議会、22年11月)、◆「米国・カナダ・オーストラリアからの輸入に日本の自給率を合わせれば80%あるから大丈夫」(野村農相、23年3月)……。
政府は20年間で5回も「食料自給率向上計画」を作ってきましたが、計画はただの一度も達成されたことはなく、政府から「反省」の弁を聞いたこともありません。
農民連は「自給率目標を定める基本計画を国会承認制とし、自給率向上を政府の法的義務とすること」を提案し、食と農の危機を打開する一大運動を提唱しています。「新農業基本法に対する農民連の提言」パンフレットを1人でも1団体でも多くの国民と農民の中に広めることを呼びかけます。
(新聞「農民」2023.8.28付)
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