女性だから男性だから?
FFPJ
「農業と女性」テーマに学習会
持続可能な食と農を実現するために、家族農業を中心とした政策への転換をめざして活動している「家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン」(以下、FFPJ)の学習会が7月31日、オンラインで行われました。
FFPJがほぼ毎月行っている連続講座の23回目。「農業と農業関連分野で活動する女性の取り組みと課題」をテーマに、奈良女子大学の青木美紗准教授が講師を務めました。講義の要旨を紹介します。
意思決定の場に女性を増やす
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講師をつとめた青木さん
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私自身は農業食料経済学や協同組合論が専門で、ジェンダー学が専門ではありませんが現場での調査・研究の経験を紹介します。
1960〜80年代、日本の高度経済成長期からバブル期と呼ばれるころには、国内の農業従事者の6割は女性が占めていました。近年、農業に従事する人口が減っている中でも女性は全体の4割ほど。しかし、全国の農業委員の女性比率は12%、農協の女性役員では8%ほどです(ともに2019年データ)。女性が多く従事しているのに、意思決定の場にほとんどいない。女性の役員登用の動きは農業に限らず高まっていますが、依然として低いと言える1つのデータではないでしょうか。
意思決定の場に女性を増やすことは「地域や組織が発展する」ことにつながります。農協の女性営農指導員を調査した経験を例に挙げます。ある女性営農指導員が青年部の会議を担当することになり、集まりが悪い状況を引き継いだ中、声かけや丁寧なメールを積極的に送り、会議の様子を広報誌などで取り上げ、参加メンバーを増やし青年部の活動も活発化しました。コミュニケーションによって信頼関係を構築し、相手の立場に立ってきめ細かい配慮をした結果だと思います。
能力や長所を発揮できる環境
大事なことはそれが「女性だから」できたわけではないということです。これらのことにたけている男性も当然います。重要なのは、その人自身が自分の能力や長所を発揮できていることです。
単純に「女性を増やせばいい」のではなく、多様な人材が働きやすい環境、得意分野を生かす配置などを考慮して地域や組織を作っていくことが求められます。年齢、障害の有無などにおいても同じことが言えます。
同時に今の日本がジェンダーの分野で遅れている背景には「性別による役割規範」や、女性に補佐的な役割を担わせてしまう「社会的規範」が根強いからだと思います。女性による家事・育児・介護の負担軽減や、活動意欲を阻害する「家業は男が継承するべき」というような意識を取り除いていく努力を皆でしていくことが重要です。
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連続講座はFFPJのホームページで視聴できます。
(新聞「農民」2023.8.14付)
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