「農民」記事データベース20230807-1564-07

遺伝子組み換えナタネの
国内自生調査

全国で71検体がGM
市民・生協団体など報告会


この現実を多くの人に
知らせることが大切

 人体や環境中にどのような影響が出るのか分からない遺伝子組み換え(以下、GM)作物。日本に輸入されたGMナタネが、国内でどのくらい自生しているか。今年も全国各地で市民によって調査が行われました。その報告会が7月22日に都内をメイン会場に、全国とオンラインでつないで開催されました。

 主催は「遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン」(以下、キャンペーン)。

 分子生物学者で「遺伝子組換え食品を考える中部の会」(以下、中部の会)の河田昌東(まさはる)さんが「GMナタネ自生調査の意義」と題して報告。「輸入GMナタネが国内で自生してしまうのは、港からのトラック輸送中にこぼれ落ちる、港や製油工場・飼料工場の周辺で種が飛散し自生する、などが要因だ」と指摘。またナタネは本来は1年草だが、主要原産国であるカナダとの気候の違いにより、日本では多年草化することを報告。自生し、自ら世代交代を繰り返し広がっていくので、抜き取り調査でそれを防ぐ重要性を指摘しました。

 19年続く市民科学

 国内のアブラナ科作物や雑草と交配してしまう実態も紹介。その上で「農作物がいつの間にかGM作物になってしまうなどの問題を含めて、市民社会がこれだけ長い期間調査を続けてきた例は、世界でもあまりない。市民科学として社会的にも評価されている」と意義を強調しました。

 日本消費者連盟の纐纈(こうけつ)美千世事務局長は「私たちの最終目的はGMナタネの輸入を止めること。しかし一足飛びにはいかない。2004年に中部の会が調査を始めて今年で19年。この現実を多くの人に知ってもらうために、調査の継続が本当に大切だと実感している」と述べました。

画像
会場であいさつする纐纈さん

 今年の自生調査は全国38都道府県で合計723検体を採取(キャンペーンが集約)。そのうち、22検体が除草剤耐性を持つGMナタネと確認されました(中部の会による三重県243検体採取のうち49検体で陽性、は含まず)。

 製油工場も要請に応える

 自生調査を実施した全国の生協組織が活動を報告。コープ自然派事業連合からの報告では、ナタネ輸入量が全国1位の神戸港周辺の取り組みを紹介。2019年の調査で陽性率が75%だったことを受けて神戸市と製油工場に管理の徹底を要請。工場側から「自生の撲滅と予防に努める」と回答があり、今年は一緒に抜き取り調査を行ったことが報告されました。

 その他に「自生調査に加えて、今年からこの問題を広く情報発信する活動を始めた」(パルシステム東京)、「港や製油工場のない地域でも自生調査を続けて、自分たちの地域にGMナタネが入ってこないように監視を続ける」(生活クラブ生協)、「他人事に感じがちなGM作物の存在も、実際に現場での検査を体験することで自分事になる」(あいコープみやぎ)などの発言がありました。

 この調査に当初から携わっている農民連食品分析センターの八田純人所長が、簡易試験に使用する試験紙について動画で解説しました。

 キャンペーン代表の天笠啓祐さんがGMやゲノム編集の最新の動きとして、京都府宮津市のゲノム編集トラフグ開発会社の新たな動きなどを報告。9月23日に京都で開かれる「ゲノム編集魚を考える市民集会」に全国から集まろうと提起をして閉会しました。

(新聞「農民」2023.8.7付)
ライン

2023年8月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2023, 農民運動全国連合会