2023年国際雑穀年
アラマンサス
一反百姓「じねん道」・家族農林漁業
プラットフォーム・ジャパン
常務理事 斎藤博嗣さん(寄稿)
2023年はFAO(国連食糧農業機関)が定めた国際雑穀年です。雑穀を栽培・販売している一反百姓「じねん道」・家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)常務理事の斎藤博嗣さん(茨城県阿見町)に雑穀への思いを寄稿してもらいました。
ダントツの栄養価
花言葉は『粘り強い精神』『不滅』
様々な生育環境に適応する
ハト麦(ご飯・お茶)、ゴマ(トッピング・油)、エゴマ(葉・油)、ソバ・宿根ソバ〈シャクチリソバ=牧野富太郎が命名〉(葉・粉・お茶)、タカキビ(ミートミレット)、そして栄養価がダントツでWHO(世界保健機関)が「未来の食物」と称した「スーパーグレイン(驚異の穀物)」のアマランサス(ご飯・パン・その他多様)――。
一反百姓「じねん道」斎藤ファミリー農園では、栄養面は元より薬草食「医食“農”源」医療・漢方などの観点からも栽培・販売している。
23年は国際雑穀年。雑穀は「気候変動に強く、痩(や)せた土壌や干ばつ、肥料や農薬を必要とせず、様々な生育環境に適応する」「健康的な食生活の重要な栄養穀物」とFAOは定義し特徴づけている。私はスーパーフードの雑穀がスーパー「超(時空を超える)」な点は、「先祖代々の伝統、文化、土着知識に欠かせない」部分にもあると考える。
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アマランサスの小さな粒に宿る、大きな力を感じながら脱穀する、子ども百姓「じねん童」たち |
先住民・小農民の伝統的・根源的な
在来の智慧を継
FAOは家族農業の概念を「家族と農場は互いに結び付き、共に発展するものであり、経済的・環境的・社会的・文化的機能を兼ね備えている……その構成は先住民・伝統的コミュニティ・漁業者・牧畜民・森林居住者・食料採集者など極めて多様である」とし、あまねく同意された1つの定義はなく、国や地域、文脈により異なるとしている。
絶滅の危機に瀕(ひん)していた雑穀
雑穀栽培の復活 先住民の復興に
20年前に私がラテンアメリカのペルーを訪れた際、首都リマ、地上絵で有名なナスカ、そしてクスコ(アンデス高原の標高約3400メートルの高地にある都市で、インカ帝国の首都)には、雑穀を売っているさまざまな市場(メルカド)があった。スペインの侵攻によって始められたキリスト教の布教において、邪教の象徴として絶滅寸前に追いやられ、約400年間「幻の作物」になっていた雑穀アマランサス(南米中央アンデスで話されるケチュア語で「Kiwicha=キウィチャ」)も、先住民族の人々が量り売りしており何だかとてもうれしかった。
伝統作物に対する栽培(記憶と伝承)の復活は、先住民文化(生業と食文化)の復興にもつながる。「身土不二」穀物の源泉としての大地と人間の生命と植物界の聖なる力は不可分である。
農事組合法人「大地のめぐみ」の農産物直売所「大きなかぶ阿見店」(茨城)、「大きなかぶ板橋店」(東京)では、「じねん道のタネ」として各種雑穀のタネも販売している。スーパーフードの雑穀を食べるもよし、お茶で味わうもよし、育てるもよし……。
「気候変動に強い」「様々な環境に適応」
「肥料・農薬を必要としない」
FAOも高く評価し、雑穀年に
雑穀は、人間が栽培化した最初の植物のひとつであり、失われつつある先住民や小農の伝統的・根源的な在来の智慧(ちえ)に想(おも)いを馳(は)せ学ぶ、国際雑穀年の2023年。「食の主権」雑穀を通じ、一人ひとりが農から「生きる力」を取り戻しましょう!
(新聞「農民」2023.7.17付)
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