「農民」記事データベース20230710-1560-01

農民連『提言』パンフ

農家から共感と賛同の声続々

 来年の通常国会で予定されている「食料・農業・農村基本法」の改定に向けて、農民連はパンフレット『食と農の危機打開にむけて〜新農業基本法に対する農民連の提言』(以下『提言』)を発行しました。生産者から届いた『提言』を読んだ感想を紹介します。


食料の有事立法に強い怒り

花農家 菅谷 均さん
茨城県笠間市

 私は枝もの中心の露地栽培で、正月の桜や桃の節句の桃などをつくっています。今の時期は、七夕の竹やお盆の花はす、小菊の出荷で忙しいです。

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グラジオラスと菅谷さん

 『提言』を読み、一番に思ったことは、政府が「食料の有事立法」を検討していること(『提言』2章2節)への怒りです。要は、有事の際には私たちも「イネ作れ、イモ作れ」ということでしょ。

 戦時中の2年間、花づくりができなかった話を聞いています。もし本当に国内で食べるものがなくなったら、そうしないといけないかもしれないが、今からそれを想定して法律をつくろうとするなんて。花農家の私には乱暴だな、と感じます。

 岸田政権は安倍政権より危ないことをしていると感じます。国民の考えとかけ離れていて、ピントがずれている。健康保険証廃止の件もそうですが、やり方が強引です。

 花き生産では、流通主体が花屋さんからスーパーなどに変化し、燃料代や資材代、電気代が上がっています。物価高の中で売る側の売り値が反映されにくいので、私たちも大変です。『提言』にもありますが、国の農業政策の目玉が「輸出で稼ぐ」というのはおかしい。農家を支援し、自給率を上げていくことにお金を使うべきです。

 『提言』で「自給率向上を政府の義務に」「政府の責任で食料支援制度を」と言っているのが良いですね。格差社会はひどいし、米価の暴落も問題だから、国がきちんと責任を持たなければいけません。


選別やめ地域の実情反映を

酪農・野菜 湯本真司さん
長野県木島平村

 57年間農業をしており、今はズッキーニと酪農の複合経営をしています。『提言』を読んで、国の選別農政が私たちに影響を与えていたことを実感しました。

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牛舎で作業する湯本さん

 私は国の拡大政策には乗らず、一家3人で自分たちの労力に見合った経営を続けてきました。しかし昨今の餌代の高騰で、再生産も危機に直面しており、年金までつぎ込む苦しい経営です。

 農民連の仲間は田んぼを15ヘクタールまで集積し、耕畜連携を進めようとクラスター事業に申し込んだが、不採択になりました。地域でがんばっている農家が点数で差別され、競争をあおられています。こうしたことが続けば離農も起こりえます。

 集落営農や法人化した大規模農家でも、トップは営農計画や人の配置などのマネジメントで夜も眠れないほど苦悩しています。30ヘクタール耕作する近隣の稲作農家は、「肥料高騰も苦しいが、機械の費用や修繕費の負担も苦しい」と言っていました。

 『提言』の中身には全面的に賛成です。東京大学の鈴木宣弘教授の動画をたまたま見てアメリカ農務省の予算の6割が食料支援に使われていると知りました。『提言』にもアメリカではフードバンクの食品の32%が国の支援とありました。農産物の価格保障と合わせて、国が買い上げて必要な人に食料を届ける制度が必要ではないでしょうか。

 兼業農家が増えて多くの農家が地域で営農できれば、特色ある農業をする農家もでてきます。『提言』が実現され、地域の実情を反映する農政となってほしいです。

(新聞「農民」2023.7.10付)
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2023年7月

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