新規就農と地域サポートを
考えるシンポジウム開催
農業の発展・地域の再生へ
福島県二本松市
現場のリアルな話聞けた
就農者同士の交流・学びあいや、就農をサポートする行政・地域・団体が一緒になって更なる担い手の定着を目指そうと、6月10日に「新規就農者と地域サポートを考えるシンポジウム」が福島県二本松市で開催されました。主催はシンポジウム実行委員会。主催団体は福島県農民連で後援は福島県、二本松市、福島大学食農学類など。会場では4人のパネリストが発言し、経験を交流しました。
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発言したパネリストの皆さん(左から佐藤さん、宇野さん、大野さん、大波さん) |
就農5年目の佐藤紫苑(しおん)さんは、伊達市でいちごときゅうりをメインに多品目の野菜を栽培しています。自分たちが作った食材で食卓を満たすことを目標に農業を始めた佐藤さんは「地域では新規就農者を受け入れる体制が整っておらず、私は就農サポート制度を利用していない。同世代で独立している仲間も少ない。全く知らない土地で農地を借りてスタートするのはハードルが高い」と経験を発言。しかし様々な困難や苦労の中でも、土地の風土や地域性を大事にしたいと話す佐藤さんは「インターネットの情報ではなく、近所の大先輩に教えてもらい試してみる、素直でかわいい農家になりたい」と笑顔で語りました。
農業の総合的な営みが魅力
会津美里町で稲作の有機栽培をしている宇野宏泰さんも新規就農者の制度を使っていないと話します。「助成を受けた後に5年間続けるというルールが窮屈に感じる。農業はやってみないと分からない部分がある」と経験を語ります。地域循環を目指し、酒蔵から「酒かす」、大工から「かんなくず」などを買い取り、植物性の堆肥を作り、16ヘクタールの米を栽培している宇野さん。早朝と夕方を農作業にあて、昼間は別の仕事をする半農半X(エックス)を実践する中で「総合的な営みとしての農業に魅力を感じる。要望としては売り先と栽培技術を提供してもらえたら」と話しました。
二本松市で新規就農者の受け入れをしている大野達弘さんは「1年間住み込んでもらって、農業技術や暮らし方を学んでもらう。何より大事なことは、地域になじむこと。地域の先輩から話をしっかり聞くように」と研修生に伝えています。また独立した就農者が冬の収入減で困らないよう、林業の会社も立ち上げている大野さん。「中山間地域の豊かさを農業でも林業でも」と話します。
県としても伴走支援を
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あいさつする実行委員長の菅野さん
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福島県農業経営・就農支援センターから、大波恒昭事務局長も登壇しました。同センターは県内の農業の担い手確保・育成を目的として今年4月に県が設置。大波さんは、昨年の県内での新規就農者は334人で過去最高だったと紹介し、「今後の県内農業の維持・発展のためには、育成から定着、経営発展まで一貫した伴走支援が必要。様々な形でサポートしていきたい」と述べました。
またこの日はオンラインで島根県邑南(おうなん)町から、地域おこし協力隊事業を活用した「おーなんアグサポ隊」についての講演などもあり、盛りだくさんのシンポジウムとなりました。
約100人の会場参加があり、実行委員長の菅野大地さんは「想像以上に充実した議論ができた。参加者から『新しいつながりがたくさんできた』『リアルな話が聞けた』と良い反応があり、とても有意義な会になった」と振り返りました。
(新聞「農民」2023.7.3付)
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