「農民」記事データベース20230612-1556-01

参加型農場でアグロエコロジーを実践

あだたら食農スクールファームの取り組み

関連/自然農法・有機栽培を身につけたい

 福島県二本松市の永田集落の耕作放棄地を使って有機農法の実践を学ぶ「あだたら食農スクールファーム」(以下「あだたら」)。2020年8月にスタートし、3年目を迎えた今年の取り組みを紹介します。


若者も意欲的に参加

 「ジャガイモの葉っぱの裏にテントウムシがいる!」「この模様は悪いことする奴だ」「去年もたくさん葉っぱ食べられたけど、意外と立派にイモ育ったよ」―。鳥のさえずりが休みなく聞こえる穏やかな朝、農場はにぎわいます。

 化学肥料などを使わない持続可能な農業を学び、新たな担い手をつくりながら、安心・安全な食を地域に提供することを目的とする、アグロエコロジーを実践する参加型実証農場が「あだたら」です。

 山あいの緩やかな傾斜に広がる「あだたら」実践農場の広さは60アールほど。この日の実習には11人が集まりました。福島市にある農業短期大学に通う学生、県外の大学を今年卒業し、地元に戻りキュウリ農家で研修中の若者、仕事を退職し地元で自給自足をしている人など、経歴は多彩です。

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実習に参加した皆さん。一番前で草刈り機を持っているのが安斉さん。後列右から2人目が根本さん

 段取りが命!
 快活な講師役

 「あだたら」は国の「中山間地域等直接支払交付金」制度と県の支援事業を活用して運営されています。中山間地での担い手づくりによる農業生産と多面的機能の維持などを目的とした交付金で、申請母体は地元の永田集落です。事業の責任者を福島県農民連の根本敬会長が務めています。

 今年から農場での「講師役」をしている地元農家の安斉靖彦さん(71)の本業は宮大工です。東京や関東で多くの寺社仏閣を保全改修してきた安斉さん。地元に戻って多品目の野菜を栽培し、自前の直売所は地域で大好評だそうです。「建築も農業も段取りと準備がとっても大事」「しっかり観察し、何でも記録しておきましょう」「種まきの前日にタオルに巻いた種をお風呂の湯船に浮かべておくと、発芽率が高まるよ」。軽快なしゃべりで作業を進行し、質問にも答えていきます。

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気になることは何でも聞きます

 年間計画に沿って月に1回行う実習。この日は「耕起栽培区」でのトウモロコシとエダマメの種まき、ブロッコリーとキャベツの苗植え付け作業などを行いました。

 実践農場づくり
 農民連でも

 作業後は農場内にあるログハウス(安斉さんが建築)に移動し、意見交流などを実施。作付け計画はありますが、参加者の自由な発想での挑戦を大事にすること、いつでも農場で作業をしてもいいことなどを皆で共有しました。「不耕起栽培区」での作付け計画とほ場の分担を決め、今後は農場内に直売所をつくり「あだたら」や地元で作られたものを販売する計画も伝えられました。

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ぼかし肥料をまいた土を混ぜてマルチを張り、苗を植えました

 根本さんは「農家の数がどんどん減っている中で、農業に関心を持つ人たちと一緒に実践する場がとても重要。農民連としても、担い手づくりの取り組みとして展開していけないかと思っている」と話しました。


自然農法・有機栽培を身につけたい

実習に参加した学生に聞く
小水大晟さん 櫛田心音さん

 今年の春、福島県農業短期大学に入学した小水大晟(たいせい)さんと櫛田心音(みおん)さん。小水さんは4月の実習から「あだたら」に参加し、櫛田さんはこの日が初参加でした。

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「環境が整っていて学びやすい」と話す櫛田さん(右)と小水さん

 果樹経営学を専攻している小水さんはネットで調べて「あだたら」のことを知ったと話します。「もともと自然農法に興味があり、実際に農園で実習ができるのはここだけだった。不耕起栽培の実践も楽しみにしていたので、何を植えるのかこれから考えたい。皆さん優しく教えてくれて楽しいです」と小水さん。

 野菜専攻の櫛田さんは除草剤などによる健康被害の実態を知り、有機農法や無農薬農法に関心を持ち進学したそうです。「学校ではなかなか学べない知識を深められると思って参加した。今日来てみて、教科書にはない豆知識をたくさん知ることができて楽しかった」と話します。

 今の国の農政や、将来考えていることについて尋ねると、「生産性にだけ目を向けていて、何かと海外頼みというイメージで今後が心配です。将来は農業関係に就職するか、自分自身で新しいことに挑戦したい」と櫛田さん。小水さんは「日本はSDGsを推進しながら、農業ではAI(人工知能)など機械化や効率化を重視し、環境破壊などの問題がある。矛盾を感じる。将来は、農薬や化学肥料を使わない安全な農業を自分もやりたい」と話してくれました。

(新聞「農民」2023.6.12付)
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2023年6月

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