発見
農の現場から
三重県農民連会長 長澤真史
切実な要求こそ
農民の自発的運動の源泉
県種子条例制定、精力的に活動
北海道で農村の
課題と格闘して
農民連の会員としてのお付き合いはかなり長く、最初は北海道です。
北海道の酪農学園大学に進みましたが、時は70年安保と大学闘争、集会やデモに明け暮れていました。勉強しなければということで北海道大学大学院の農業経済学専攻に進み、修了後しばらく札幌市にある研究所勤めをしていた1989年、東京農業大学が北海道網走市に新設した生物産業学部に誘われ赴任しました。
畜産物市場を中心に畜産経済論を主な研究対象としていましたが、網走に来てからは地域農業と農協問題、TPP(環太平洋連携協定)、日豪EPA(経済連携協定)などの自由化問題等々、時々の日本農業の焦眉の課題に取り組むことができ、何よりも農村現場の問題と格闘する機会が多く与えられたように思います。
まもなく北見、小清水、訓子府(くんねっぷ)などオホーツク地域の農民連との濃密な付き合いが始まり、学習会や講演会に頻繁に呼ばれ、時には「研究者としてそれでいいのかい?」など手厳しい言葉を浴びたりしました。
県連会長と住職
二足のわらじ
2017年、大学の定年退職を迎え27年間の網走生活から、実家のある三重県松阪市に帰郷しました。
実家は代々、浄土真宗の小さなお寺で、長男であり、相当悩みましたが、父親の高齢化もあって住職を15年ほど前に交代し、以来二足の草鞋(わらじ)生活でした。
三重に帰って間もなく農民連の方々が自宅まで来られ、主要農作物種子法(種子法)の廃止に伴う県条例の制定をめぐって三重県でも取り組みたいとのこと、早速多方面に呼びかけ、「三重たねネットワーク」を立ち上げました。
学習会の開催、県の担当部署との交渉、県知事への公開質問状、県議会及び委員会の傍聴、「たねカフェ」を県内各地で開催して学習会を行うなど、農民連の皆さんと精力的に活動を行って、県条例の制定にこぎ着けました。
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「三重たねネットワーク」設立総会で講演する長澤会長=2019年11月8日 |
県内各地を歩き
実情と課題把握
農民連の学習テキスト『農民連は何をめざし、どうたたかうか』にあります「要求こそ農民の自発的運動の源泉」、「全農民を視野に入れた仲間づくり運動」という点は運動にとって重要な指針です。
とりわけ若手(農民連の後継者)の獲得などの組織強化に取り組むことが求められ、そのために県内各支部を歩き、一人一人の会員の実情と運動課題の明確化が重要なことだと考えています。
当面、コロナ危機による活動の停滞を克服し、ウクライナ危機、気候危機も加わって深刻化する農業危機の打開、循環型地域の形成、アグロエコロジーの実践など、課題は山積しています。
今後、全国の仲間との連帯を強めるとともに、どうぞご支援をよろしくお願いいたします。
(新聞「農民」2023.5.1付)
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